和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

【動画】「森の聲」感じて 北大研究林でアート作品公開

吉野祥太郎さんの作品「森の聲」(古座川町平井で)
吉野祥太郎さんの作品「森の聲」(古座川町平井で)
一筋の水を光らせた作品「水に含まれるもの」
一筋の水を光らせた作品「水に含まれるもの」
 和歌山県古座川町平井にある北海道大学和歌山研究林で、彫刻家の吉野祥太郎さん(43)=東京都=らが制作した作品が完成し、公開されている。アートで熊野の森の素晴らしさを発信しようと、NPO「和歌山芸術文化支援協会」(和歌山市)が毎年取り組んでいる紀の国森づくり基金活用事業「森のちから」によるもので、今回のテーマは「森の聲(こえ)」。公開は当面、土日曜を除いた12月6日までの予定という。


 「森のちから」は熊野の森にアーティストを招き、現地制作によって新たな視点から森の魅力を発見したり、地域住民と交流したりして、歴史と文化を育んできた熊野の森を発信しようという事業。2007年度から田辺市中辺路町や串本町、古座川町を舞台に開催している。13回目の今回は、「土地の記憶」を呼び起こすことを表現し、国内外の美術館やギャラリーだけでなく、野外での地域密着型イベントなどで活躍している吉野さんを招いた。

 吉野さんは14日から21日まで公開制作に取り組み、「森の聲」「水に含まれるもの」という二つの作品を完成させた。

 「森の聲」は、吉野さんが森へ向かう道を進んでいる際に出合った落石や風雨によって折れた枝などに着目し「さまざまな要因で発生した障害物だが、そこに意思があったら何か伝えたいことがあるのでは」というコンセプトで制作したもの。

 倉庫などとして使われている小屋の一画に防水対策を施した上で、関係者にも協力してもらって集めた落石や枝などを配置し、引き込んだ谷水を流して「自然からの聲」を表現したという。

 「水に含まれるもの」は、この森をつくる豊かな水について「何か自然の力を含んだ水。われわれには計り知れない力を可視化してみたい」との思いで制作した。アマゴの飼育に使われていた水槽小屋を遮光し、天井部から垂らした一筋の水に色やタイミングが変化する光を透過させて水自体が発光する仕組みの不思議な空間を作った。

 23日に地域住民ら約20人が参加したアート・ツアーがあり、現地を訪れて作品を見学。新宮市から参加した榎本恭子さん(65)は「森のちからは毎回楽しみにして参加している。面白い作品で見入った」と笑顔を見せた。

 吉野さんは「和歌山県を訪れたのは今回初めてだが、ここはイメージしていた原風景が残っている場所で、すごく良い景色。ゆっくり時間をかけて作品を見ていただけたらありがたい」と話していた。

 北大和歌山研究林の本館でも、美術家の南条嘉毅さん(45)=串本町古田=が標本室を映像や照明で彩った作品「森の資料室」を公開している。

 作品の公開は午前10時~午後3時で、見学には事前に北大和歌山研究林への連絡が必要。林内は火気の使用や動植物の採集は厳禁。問い合わせは北大和歌山研究林(0735・77・0321)へ。