和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

「ふるさと長野」の歴史一覧に 220枚のスライドにまとめる

森光國さんが田辺市長野の歴史や文化、産業など220枚にわたってまとめた資料。右奥は前公民館長の那須勝美さん(和歌山県田辺市長野で)
森光國さんが田辺市長野の歴史や文化、産業など220枚にわたってまとめた資料。右奥は前公民館長の那須勝美さん(和歌山県田辺市長野で)
森光國さん
森光國さん
 和歌山県田辺市長野出身で郷土史に詳しい森光國さん(85)=横浜市栄区=が、1年がかりでふるさとの歴史や文化、産業、自然などの移り変わりをスライド形式でA4用紙220枚分の資料にまとめた。公民館の職員らが模造紙32枚に張り、今後、文化イベントや近隣地区との交流の際などに展示する。スライドショーに編集して公開する計画だ。


 森さんは「先人たちへの感謝と、長野地区の持続と発展に少しでも役に立てればとの思いから手がけた。少子化で中学校が閉校になり、高齢化や農業の後継者不足などの課題を抱えている中、少しでもふるさとを元気づけられたらうれしい。豊かな自然とさまざまな果実が実る長野が将来も輝いてほしい」と話している。

 長野地区では毎年11月に小学校の学習発表会と併せて、公民館が主催して地区の文化展を開いてきた。当時長野公民館長だった那須勝美さん(71)が、文化展で地区の写真や歴史資料などをパネルにして展示したいという思いを抱き、昨年秋に森さんに協力を呼びかけていた。

 森さんは大阪府立大学(現大阪公立大学)農学部出身の農学博士で、公益社団法人日本缶詰協会の専務理事、大手食品会社の社外監査役などを歴任。2011年には2年がかりで地区の社会史をまとめた本を自費出版した。

 今回の資料は、その社会史を基に作成した。地区の成り立ちや太平洋戦争、戦後の生活、祭祀(さいし)、小中学校の歴史、自然、農業など大きく16のテーマに分けてまとめた。那須、森、久保、竹内など同姓が多く、それを区別するために屋号で呼び合っていたこと、太平洋戦争では地区の若者ら100人が戦死したこと、戦後に青年団が軽音楽団を発足させたことや、戦中途絶えていた長野八幡神社の例祭で奉納する「住吉踊」(1972年に県無形民俗文化財に指定)を復活させたことなども記している。

 少子高齢化や後継者不足のほか、定時バスが運行されなくなった現状、梅の栽培が南高と小梅に集中する中で地区発祥の「古城梅」の生かし方、デジタル時代への対応など、課題や今後の展望などもまとめた。

 コロナ禍の影響で今秋も文化展の中止が決まったが、森さんからこの力作を託された那須さんや公民館の職員らは、地元の人々に見てもらえるよう、展示の機会をできるだけ多くつくりたいとしている。那須さんは「かつての長野の姿を次世代につなぎ、地区への思いを深めてもらいたい」と話している。