和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月24日(日)

かやぶき古民家を食堂に 龍神村に移住のリーさん

かやぶきの古民家で「龍乃原食堂」と「龍乃原喫茶」をオープンするリー・シェンジェさん(和歌山県田辺市龍神村広井原で)
かやぶきの古民家で「龍乃原食堂」と「龍乃原喫茶」をオープンするリー・シェンジェさん(和歌山県田辺市龍神村広井原で)
古民家の離れを改修した「龍乃原喫茶」の店内。龍神村産の木材を使い、木のぬくもりを感じられる落ち着いた雰囲気となっている
古民家の離れを改修した「龍乃原喫茶」の店内。龍神村産の木材を使い、木のぬくもりを感じられる落ち着いた雰囲気となっている
「龍乃原食堂」には縁側や畳敷きの和室に座席を設けている
「龍乃原食堂」には縁側や畳敷きの和室に座席を設けている
地図「龍乃原食堂」「龍乃原喫茶」
地図「龍乃原食堂」「龍乃原喫茶」
 和歌山県田辺市龍神村広井原に昨年移住してきたシンガポール出身の李先捷(リー・シェンジェ)さん(32)が20日から、自身が住むかやぶきの古民家で「龍乃原食堂」を始める。築120年以上の歴史と木のぬくもりを感じられる古民家で、離れも「龍乃原喫茶」として改修。龍神村や世界の茶をメインとし、料理や茶に合わせたデザートも提供する。


 リーさんは、早稲田大学に留学して日本の政治について学んだ後、京都市で日本人の友人と旅行会社を起業。現在は、カメラやドローンで龍神村の風景を撮影し、インターネットを活用したオンラインツアーも手がけている。以前から日本の茶に興味があり、茶の文化の情報発信をしている龍神村在住の森口周さんと知り合ったことがきっかけで、自然の中に茶の木が残る龍神村が気に入り移住してきた。

 古民家の改修は昨年他界した地元のベテラン大工、滝本静男さんと長男の則行さんが手がけた。各部屋を仕切る障子には、かつて龍神村で盛んに生産されていた「山路紙」を使用。戦後いったん途絶えた「山路紙」を復活させた龍神村東の造形作家、奥野誠さんと妻の佳世さんが作ったものを使用している。

 「食堂」の座席は、いろりや掛け軸がある畳敷きの部屋と、建物の縁側、庭に設けている。主に茶を楽しんでもらうために使う予定の「喫茶」は、築70年以上の離れを改修した。則行さんが龍神村産の焼き杉で作ったテーブルやベンチを置いているほか、本棚や読書スペースも設けている。「喫茶」にはペットの犬も一緒に入ることができる。「食堂」も縁側など畳の部屋以外は犬と一緒に利用できる。

 いずれの店内にも机や茶釜、たんす、掛け軸、日本人形など、龍神村内のさまざまな人が提供してくれたものを置いている。建物の改修には昔ながらの自然の素材を使うことにこだわり、龍神村産の木材のほか、塗装には松煙や柿渋を使用するなど「子どもや犬に優しい」環境となっているという。

 「食堂」と「喫茶」のメニューは共通で茶をメインに提供していく予定。龍神村産の茶葉を使った茶を用意しているほか、台湾や中国、スリランカ、インドネシアなど世界の茶を、季節によって旬のものを仕入れて提供する。料理はリーさんと、東京で料理店の経営や食関係のコンサルタントなどをしていた森口さんが担当。魚や野菜など紀州の食材を使ったシンガポール風の料理を用意している。

 オープンに先立ち、7日には世話になった知人や近隣の住民を招いてプレオープンをした。

 来店した奥野誠さんは「建物やシチュエーションなど、これほど空間の完成度が高い古民家の店は珍しい。お客さんが落ち着いてくつろげる空間になっていて、リーさんの気持ちが隅々まで行き届いているように感じる」と語った。

 リーさんは「豊かな自然と、その自然の中に残っている茶の木は龍神村の宝物だと思う。海外でも、自然に育っている龍神村のお茶に魅力を感じる人は多い。龍神村の自然とお茶を楽しんでもらい、シンガポールの食文化も感じてもらえたら」と話した。

 リーさんによると、「喫茶」は龍神村の住民や海外の人とも交流できる場所としても提供する。ギャラリーや展示会、イベント会場として、無料で使用できるようにするという。

 「食堂」と「喫茶」は20日以降の金、土、日曜に営業する。問い合わせは、リーさん(050・5809・8908)へ。