和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月23日(土)

参院選2022/私の視点 識者インタビュー(3)/和歌山大学紀伊半島価値共創基幹准教授/西川 一弘(にしかわ かずひろ)さん(43)/社会教育学/投票率/若者の意見育てる環境を

和歌山大学紀伊半島価値共創基幹准教授 西川一弘さん
和歌山大学紀伊半島価値共創基幹准教授 西川一弘さん
参院選2022「私の視点 識者インタビュー」題字
参院選2022「私の視点 識者インタビュー」題字
 ―若者の低投票率が続いています。

 これまで、対策として「若者と社会の接点をつくる」「選挙に関与する」の二つを挙げてきました。

 前者については変わりません。しかし、後者には疑問を感じてきました。アルバイトで選挙に関わった学生が「投票に来るのは高齢者ばかり。自分の1票で何かが変わると思えない」とこぼしていました。リアルな実感だと思います。

 ―だからこそ、若者が投票に行くことで社会が変わるのではないでしょうか。

 日本の若者は少数派です。若者の投票率が上がって、60代、70代と同じくらい選挙に行くようになっても、人数が圧倒的に違います。さらに、最近の若者の投票行動は、高齢者とそんなに変わらないという傾向もあります。そうなると、若者が選挙に行っても何も変わらないと考えるのは不思議ではありません。

 ―選挙権を18歳に引き下げた効果はないのでしょうか。

 選挙権は18歳ですが、参院選の被選挙権は変わらず30歳です。自分たちの代表を選ぶと意識するのは難しい。制度を変えて被選挙権も18歳にできればいい。

 議員には経験も大切ですが、国民の気持ちをくみ取れるかが重要です。学校や仕事を辞めなくて議員になれたり、子育てしながら議員活動ができたり。議員になるハードルを下げ、いろいろな声を反映できる仕組みが必要です。

 ―制度を変えるには時間もかかります。

 それぐらい、現状を変えるのは難しいという話です。政治に関心を持つため、今できることとしては、個人ではどうにもできない壁にぶち当たることです。壁を何とかするため、政治の役割が必要だと感じられるはずです。

 ―壁にぶち当たるには行動が必要です。

 その点、新型コロナウイルス禍は誰もが政治を考えるきっかけになるかもしれません。「学校にも通えず、イベントもできない。なぜ若者の行動が制限されるのか」。物価高も身近に感じやすい。「生活が苦しくなる。企業の価格転嫁をどの程度まで受け入れられるか」。個人では変えられないけれど、政治なら対策を打ち出せます。

 ―大人や社会にできることはありますか。

 判断が必要なさまざまな場面で、若者の意見を聞いて、反映させることです。物事が知らないところで決まっていくと、しらけてきます。聞かれる若者も考えざるを得ない。若者の意見を育てる環境が重要です。
(おわり)