和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

田辺の「応援団」づくり活発 コロナ落ち着き交流続々

目的地の近露王子に到着した「熊野リボーンプロジェクト」の受講生ら(和歌山県田辺市中辺路町近露で)
目的地の近露王子に到着した「熊野リボーンプロジェクト」の受講生ら(和歌山県田辺市中辺路町近露で)
 新型コロナウイルスの流行が全国的に落ち着く中、和歌山県田辺市の「関係人口」づくりが活発化してきた。在住していなくても、特定の地域と関わりながら交流する「応援団」。熊野古道を歩いて地域づくりを考えたり、ミカンの収穫を手伝ったりしながら地域のファンが育っている。

■古道沿いの営み学ぶ 低山トラベラー

 田辺市の関係人口養成講座「熊野リボーンプロジェクト」の現地実習が26~28日にあった。受講生は土地の歴史や文化に触れながら山を歩く「低山トラベラー」。首都圏在住者を中心にデザイナーやエンジニアなど職業もさまざまな12人が、熊野古道を歩き、里山の営みを体験した。

 講座は10月に開講。受講生は3回にわたって熊野の歴史文化、森林保全の取り組みについて講義を受けており、現地を訪れたのは、今回が初めて。12月にはオンラインで成果発表会があり、「熊野の林業を未来へつなぐための構想」をテーマに、それぞれのアイデアを披露する。

 実習では熊野古道中辺路を高原熊野神社から近露王子まで歩いたほか、林業の現場を訪れ、植林などを体験した。古道では真砂充敏市長がガイドを務めた。

 茨城県から参加した広告代理店勤務、甲斐千晴さん(39)はコロナ禍をきっかけに始めた山歩きが高じて受講。「古道は最高。信仰の道を歩いていると実感できた。人生の道に迷っている人は歩いてみた方がいい」と絶賛。林業の現状を学んだことで、見える景色も変わってきたという。

 市は2018年度から、別の関係人口養成講座「たなコトアカデミー」を首都圏で開講。これまで3期41人が修了し、本年度も10月から17人が受講している。講座をきっかけに市に移住した人がいるほか、たなコトの修了生がリボーンプロジェクトに参加するケースも生まれるなど「田辺ファン」の輪が広がっている。

 千葉県から参加したウェブ制作者、永井里沙さん(29)は「昨年度はたなコトを受講したけれど、コロナ禍でオンラインのみだった。ようやく現地に来られた。山歩きは疲れたけれど、魅力を堪能できた。ウェブだけではこの魅力を伝えきれない。もう一工夫して多くの人に知ってもらいたい」と目を輝かせた。