和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

小学生が森の価値や魅力体感 教育モデル事業で

ウバメガシの苗を植える新庄小学校の児童ら(19日、和歌山県田辺市中辺路町近露で)
ウバメガシの苗を植える新庄小学校の児童ら(19日、和歌山県田辺市中辺路町近露で)
 世界遺産の地で暮らす和歌山県田辺市の子どもに森を中心とした自然環境の価値や魅力を体感してもらおうと、旅行業を営む田辺市熊野ツーリズムビューロー(TB)は、市内の小学生を対象に森林環境プロジェクトを始めた。18、19日には新庄小学校5年生26人が、植林体験などを通して、未来の古里の姿について考えた。


 自然との関わりが減っている子どもたちに林業を通じて生きる力を身に付けてもらうことなどを目的にした事業。本年度は県の「紀の国森づくり基金」を活用したモデル事業で、新庄小学校と上芳養小学校を対象に実施。林業ベンチャー「ソマノベース」(田辺市文里2丁目)や市教育委員会が協力して教育カリキュラムとしての確立を目指している。来年度から、市内の子どもを対象に本格的に事業を展開していく予定。

 新庄小学校児童は18日、校内で「森林の公的機能を学ぶ」をテーマに学習。今と昔で変わった山や川などの自然環境や、昔の山と人との関係などについて学んだ。

 19日は午前中、同市中辺路町近露で植林を体験。ソマノベースの奥川季花社長(25)らの指導の下、山にくわで穴を開け、ウバメガシの苗を1人5本ずつ植えた。奥川社長は、この日植えた苗は20年後、紀州備長炭を作るのに使えるようになることなどを説明した。午後からは市内の製材所を見学したり、木工体験をしたりした。

 植林を体験した岡本まゆさん(10)は「くわを使うのは少し怖かったけど、楽しかった」と言い、廣田芽依さん(11)は「3本目を植えるころからしんどくなってきた。木を植えるのは大変な仕事なんだなあと思った」と話した。

 奥川社長は「児童はみんな苗を一本一本丁寧に植えてくれた。植林した苗の周囲に落ちていたごみを自主的に集めてくれたのもうれしかった」と話した。

 ビューローの赤木靖人事務局長(52)は「教育カリキュラムには、間伐体験やどんぐり拾いなどを加えることも考えている。将来的には都会の子どもにも参加してもらえるようになれば」と話した。