和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

拝殿の完成祝う みなべ町の清川天宝神社

建て替えられた清川天宝神社の拝殿(和歌山県みなべ町清川で)
建て替えられた清川天宝神社の拝殿(和歌山県みなべ町清川で)
 和歌山県みなべ町清川、清川天宝神社の拝殿が建て替えられた。10月31日に総代や区長らが参列して報告祭を営んだほか、区民らも加わり完成を祝った。


 前の拝殿は本殿や社務所とともに、1913(大正2)年に再建された。それから100年以上たち、傷みがひどくなってきたことから建て替えを決めた。二の鳥居をくぐり、拝殿までに建つ長床は1990年に再建された。二の鳥居は2年前に建て替えたばかり。

 拝殿の建て替え費用は、地域の出身者である前芝宗三郎さん(1917~2012)が外務省勤務などを経て、終戦後に福岡県で興した計測機器などの製造販売会社「昭和機器工業」(前芝信介社長)をはじめ、区民や出身者らから寄付を受けた。

 建て替えは、宮守で地元の大工である柳生伸次さん(68)が受け持ち、5月から工事を始めた。7月上旬に棟上げを終え、10月20日完成した。

 建材にヒノキを使い、銅板ぶきの入り母屋造り。彫刻が施された虹梁(こうりょう)や木鼻(きばな)などは以前のものを磨いて再利用している。同時に社務所から拝殿につながる渡り廊下の屋根も新しくした。

 報告祭は、秋祭りに合わせて営まれた。岡本俊彦宮司が祝詞を奏上し、参列者が順番に玉串をささげた。例年であれば、秋祭りでは4地区が獅子舞を奉納するが、昨年に続き新型コロナウイルスの感染予防の観点から神事だけにした。

 清川天宝神社は、1517年に龍神山城入道が高野天宝神社より勧請したといわれ、1908(明治41)年に清川地域にあった五つの神社を合祀(ごうし)して、今の神社が誕生した。祭りに奉納される獅子舞のうち、名之内の獅子舞は「伊勢太神楽の系統を受け継いでおり、県内では最北限に当たる」といわれ、県の無形文化財に指定されている。毎年、祭りのころ、参道などに群生するアサマリンドウが咲くことでも知られる。

 総代長の大木宏之さん(78)は「伝統の祭りを次世代に引き継ぐためにも、神社をきれいにしたかった。氏子が減り続ける中で、できるうちにと思い、皆さんの協力を得て思い切って建て替えることにした。獅子舞は来年こそできればと思う」と話していた。