和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

サツマイモで地域活性化 「なんたん蜜姫」増産や新商品計画

なんたん蜜姫の畑に獣害を防ぐための電気柵を設置する関係者(和歌山県串本町潮岬で)
なんたん蜜姫の畑に獣害を防ぐための電気柵を設置する関係者(和歌山県串本町潮岬で)
アシストスーツを試着し荷物を持ち上げる関係者(17日、和歌山県串本町サンゴ台で)
アシストスーツを試着し荷物を持ち上げる関係者(17日、和歌山県串本町サンゴ台で)
 本州最南端の町・和歌山県串本町特産のサツマイモ「なんたん蜜姫」で地域を活性化させようというプロジェクトが始まった。生産者らでつくる「なんたん地域活性化協議会」(柴田明夫会長)による「潮岬・大島生活圏」での取り組みが、総務省の支援事業に採択。耕作放棄地再生による増産や規格外品を活用した焼酎などの新商品開発を計画している。


 なんたん蜜姫は果肉が赤みを帯びた鮮やかな黄色でねっとりとした食感を持ち、濃厚な甘みがあるのが特徴。県によると、同町では昔から「サイパン」と呼ばれるサツマイモが栽培されてきたが、品質が異なる系統が混在していたことから2009~13年に関係者が共同で品質の優れた系統を選抜。「なんたん蜜姫」と命名し、ブランド化に取り組んでいる。

 事業の実施主体である活性化協議会は、高齢化による産業の衰退や担い手不足が危惧されることから産業振興や担い手の確保などに取り組もうと、この地域で栽培に取り組んでいる「串本さつまいも会」(柴田会長、28人)が母体となり、地域住民も加わって今年3月に発足した。

 具体的には産業振興として耕作放棄地を活用することによって増産を図ったり、獣害を防ぐ電気柵を設置したりするほか、今年の秋に収穫するサツマイモを使い、酒造業者に依頼して焼酎を試作するといった新商品の開発を目指している。

 また、高齢化した生産者の労力を軽減するためにアシストスーツを導入することや農業体験を通じた交流に取り組み、地域の担い手となる移住者や新規就農者の確保につなげることも計画しているという。

 活性化協議会では16日、同町潮岬にある畑にメンバーが集まり、近年被害が出ているイノシシなどからサツマイモを守るための電気柵を設置。17日には同町サンゴ台の町役場で電動のアシストスーツの試着も体験し、出席者からは「慣れたら結構使えそう」といった声が出ていた。

 柴田会長(72)は「なんたん蜜姫は甘みが強く、初めて食べた人は砂糖が入っているのかと驚くほどおいしい。栽培に携わっている人たちが高齢化してきているので、若い人たちにも加わってもらいながら生産振興や地域の活性化に取り組んでいければ」と話している。

 活性化協議会の取り組みが採択された総務省の「過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業」は、複数の集落で構成される「集落ネットワーク圏」での地域産業の振興などの活動を支援するもので、交付決定額は1165万5千円。