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2024年12月21日(土)

「親子で読んで」 林芙美子童話集を刊行

「新選 林芙美子童話集 第1巻」
「新選 林芙美子童話集 第1巻」
 作家・林芙美子(1903~1951)の作品を研究している和歌山県田辺市出身の廣畑研二さん(65)=東京都=が、林が執筆した童話や子ども向けの詩を集めた「新選 林芙美子童話集 第1巻」を論創社(東京都)から刊行した。廣畑さんは「親子で一緒に読んでもらいたい」と話している。


 林は、貧困にあえぎながらもしたたかに生きる女性を描いた自伝的小説「放浪記」などで知られる作家。一般的に童話作家としては認知されていないが、子ども向けの物語や詩を晩年まで数多く執筆していたという。

 廣畑さんは田辺市芳養町出身。田辺高校、東京都立大学(東京都)を卒業後、在野で日本近代史の研究を長年続けている。歴史研究の過程で林に興味を持ち、これまでに「林芙美子全文業録―未完の放浪」「林芙美子 放浪記 復元版」「甦(よみがえ)る放浪記 復元版覚え帖」(いずれも論創社)の計3冊を刊行している。

 今年は林の没後70年にあたる。命日(6月28日)を前に、童話集の第1巻を刊行した。続巻も制作中で全3巻の予定。

 第1巻には「鶴の笛」「ひらめの学校」「首輪をはめたクロ」など短編童話17作品と、「天文学者」「しゃぼんだま」など詩4作品を収録している。

 収録作品の内容は主に小学校高学年向けだが、「もっと小さな子どもには大人が読み聞かせてあげてほしい」と廣畑さん。「声に出して読むと心に響く」とし、子どもには音読を勧めたいという。小学校低学年でも読めるように、漢字にはすべてふりがなを付けている。

 廣畑さんは本の中で、林の童話や子ども向けの詩について「英雄物語や冒険物語ではなく、どこにでもいる小さな動物や、弱い立場の人々に向けられた、著者のあたたかく、やさしいまなざしを感じていただければ」と述べている。

 林は、子どもに向けて戦争の愚かさや悲しさを伝える作品も多く執筆した。1巻に収録している詩の一つでは、自身が疎開先から戻り、東京の焼け野原を見た時の気持ちを「幼い者たちには この焼け野原を イソップの話にして語ってやりましょう」とつづっており、その後、日本版の「イソップ=動物寓話(ぐうわ)集」の制作に励んだ。廣畑さんによると、終戦後に発表した1作目の長編小説「お父さん」(第3巻で収録予定)も、戦争を題材にした子ども向けの物語だったという。

 廣畑さんは「子どもたちに非戦の思いを伝えたい一心だったと思う。現代の子どもたちにも、その願いを伝えられれば」と話している。