和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

〝厳しい冬〟いつまで 飲食業界、深まる苦境

金曜の夜でも人通りの少ない味光路(12日、和歌山県田辺市湊で)
金曜の夜でも人通りの少ない味光路(12日、和歌山県田辺市湊で)
 長引く新型コロナウイルス禍で、飲食業界の苦境が深まっている。和歌山県田辺市の飲食街では平時だけでなく、書き入れ時の忘新年会シーズンもにぎわいが消えた。春に向けた歓送迎会も予約が全く入らないという。「厳しい冬はいつまで続くのか」。飲食店経営者からはため息が漏れる。


 田辺市の飲食街「味光路」のある飲食店は、80人対応の広間を半年以上使用していない。「この1年で数回あった利用も密を避けるため20~30人程度。ここまで厳しいのは初めてだ」。経営者の男性は、テーブルだけが並ぶ広間を見つめつぶやいた。

 会食、宴会の自粛を受け、同店は夜間の営業を団体予約がある日のみに限定。ランチタイムの午後2時を過ぎると閉店している。「もともと、ランチの利用は多くない。冠婚葬祭も規模縮小で、仕出しの注文も少ない。昨年の売り上げは8割減った」と話す。

 売り上げに関係なく、固定費は月数百万円かかる。「支払いは待ってはくれない。雇用維持のためにも何とか営業を続けるしかない。だが個店の努力には限界がある。さまざまな飲食店が集まる味光路はまちの資源。これを守るためには行政の支援も必要だ」と力を込めた。

 田辺市湊の日本料理店も「昨年12月から予約はほとんど入らない。夜の客は1組程度。一時休止していたランチを再開したが、利用は少ない」と嘆く。

 メニューは新鮮な魚介類がメインだが「客数が読めないから、仕入れが難しい。お造りで使えなかったら、煮付けにするなど工夫はしているが、廃棄が増えた」と打ち明ける。

 飲食店に食材を納入する青果店や鮮魚店、酒販店も状況は厳しい。「なじみの鮮魚店から『いいカツオが入ったから買ってほしい』と頼まれると断れない。苦しいのはお互いさま。助け合って乗り切るしかない」と話した。

 同市湊の飲食店では「郊外店と比べて駅前はさらに厳しいと感じている。知事は経済を回すと言っているが、飲食店、駅前自体が危険であるかのようなムードがあり、消費行動につながっていないのが実態。行政は本当に現状を分かっているのだろうか」と疑問を投げ掛ける。

 味光路にある居酒屋の経営者は「いつまで耐えればいいのか。先が見えないのがつらい。コロナ禍が落ち着いても、以前のようには戻らないだろう。冬を終えたら春が来るのかさえ分からない」とこぼした。