【動画】3列シートの最上級SUV マツダ CX―80に試乗
CX―80は、3列シートを備えたマツダの最上級SUV(スポーツタイプ多目的車)。3・3リットルの直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、全長5メートル近い車体を軽々と走らせる。豪華な内装はVIP(要人)カーを思わせるが、強力なエンジンと優れた操縦性の組み合わせにより運転する楽しみも味わえる。
■パワーユニットは3種類
3列シートのSUV「CX―8」の後継車として2024年10月に発売された。CX―8が2・2リットル直列4気筒エンジンを横置きにしたFF(前輪駆動)ベースの車だったのに対して、CX―80は6気筒エンジンを縦置きにするFR(後輪駆動)がベースになっている。
パワーユニットは3種類。基本になる3・3リットルディーゼルターボエンジンは最高出力231馬力、最大トルク51・0キロを発生。ディーゼルハイブリッド(HV)はさらに強力で、254馬力のエンジンを16・3馬力のモーターで補助する。もう一つのパワーユニットは2・5リットルプラグインハイブリッド(PHEV、ガソリンエンジン188馬力+モーター175馬力)。満充電にするとモーターだけで67キロ走ることができる(WLTCモード)。
軽油1リットル当たりの燃費はディーゼルが16・7~18・3キロ、HVが19・0~19・2キロとなっている。
車輪の駆動方式は、ベーシックなディーゼル車は二輪駆動と四輪駆動を選べるが、HVとPHEVは四輪駆動のみの設定になっている。
乗車定員は6人または7人。6人乗りは2列目シートがセパレートタイプかウオークスルータイプかを選ぶことができる。3列目シートを頻繁に使う場合にはウオークスルーが便利だし、4人までの乗車が多い場合にはセパレートタイプの方がゆったり座れる。7人乗りは、2列目シートが3人掛けのベンチシートになる。
■上質で静かな室内
試乗車は、上級グレードのXDハイブリッド・プレミアムモダン。車幅が1・9メートル近くあり、正面から見ると分厚いフロントグリルは迫力満点。全長も約5メートルあるので、さらに大きな車に見える。
ドアを開けると、白いナッパレザーのシートが目に飛び込んできた。本革のシートは座り心地がいい。センターコンソールは白っぽい木目調の仕上げ。インパネには薄いグレーの布をあしらっている。上質な内装に思わず声が出たほどだった。
マツダのディーゼルエンジンは音が静かで、回転も滑らかだ。スターターボタンを押してエンジンが始動しても、車内にはかすかな回転音しか入ってこない。走り出しても騒がしくなることはない。同乗者にディーゼルであることを告げなければ、ガソリン車との違いは気付かれないだろう。
CX―80の車重は2トンを超える。しかし最高出力254馬力、最大トルク56・1キロの強力なエンジンはその巨体を軽々と走らせる。スタート時にはさらにモーターがアシストしているはずだが、エンジンがあまりにも力強いので、電動感はほとんどない。モーターの役割は、動力性能の向上というより燃費の改善なのだろう。ディーゼルに対して、HVの燃費改善効果は軽油1リットル当たり約2キロとなっている。
一方で価格設定は、ディーゼルの最上級グレードであるXDエクスクルーシブモード(4WD)が545万500円であるのに対して、HVの最も安いエクスクルーシブスポーツが582万4500円。装備は同一ではないが、40万円近い価格差をどう考えるかはユーザー次第だ。
■余裕の動力性能
話題を動力性能に戻せば、巨大なトルクのおかげで、アクセルをじわりと踏み込むだけで交通の流れに乗った加速が得られ、運転にも余裕が生まれる。
上り坂や高速道路の本線に合流する際などもう一段パワーが欲しいときには、少しアクセルを踏み増すだけでぐっと加速する。一般道でフルスロットルにする機会は恐らくないだろう。
高速道路の巡航も余裕たっぷりだ。直進安定性に優れ、室内はとても静か。運転席・助手席と3列目シートの同乗者との会話もスムーズにできそうだ。
その3列目シートは、座り心地はいいが、フロアから座面までの高さが足りない。身長172センチのリポーターが座ると膝が上がり、内ももが浮き上がってしまう。短距離の移動はいいが、大人6人が乗っての長距離ドライブは厳しそうだ。
サスペンションは、前輪にダブルウィッシュボーン、後輪にマルチリンク形式を採用している。弟分に当たるCX―60と同一の形式だが、セッティングはだいぶ変更されたようだ。CX―60の足回りはかなり硬めで、路面の小さな凹凸がコツコツとドライバーに伝わってきた。道路の補修跡やマンホールなどを乗り越えた際のショックも大きめだった。
それに対してCX―80のサスペンションは、路面からのショックを上手に吸収し、乗り心地がぐっと滑らかになった。道路の補修跡などでサスペンションに大きな入力があると芯の堅さが伝わってくるが、基本的に乗り心地は快適だ。
高速道路では、少しねっとりした粘りのある走行感覚が伝わってきた。試乗で走った紀勢自動車道は制限速度が70キロと低いので、新東名の120キロ制限区間を走ってみたい。
カーブが続く山道などでのハンドリングも素直で、車体の大きさを全く感じさせない。大出力のディーゼルエンジンと優れた操縦性により、運転が楽しめる3列シートSUVに仕上がっている。
【試乗車提供】和歌山マツダ田辺店(田辺市新庄町2157、0739・22・8535)
リポーター 長瀬稚春=運転免許歴49年。紀伊民報制作部長
【データ】 全長×全幅×全高=4990×1890×1710ミリ▽ホイールベース=3120ミリ▽車重=2120キロ▽駆動方式=4WD(四輪駆動)▽エンジン=3283cc水冷6気筒DOHCディーゼルターボ、187kW(254馬力)/3750回転、550Nm(56.1キロ)/1500~2400回転▽モーター=12kW(16.3馬力)900回転/153Nm(15.6キロ)200回転▽燃料消費率=19.0キロ(WLTCモード)▽トランスミッション=8AT(トルコンレス)▽車両本体価格=632万5千円(XDハイブリッド・プレミアムモダン)
■パワーユニットは3種類
3列シートのSUV「CX―8」の後継車として2024年10月に発売された。CX―8が2・2リットル直列4気筒エンジンを横置きにしたFF(前輪駆動)ベースの車だったのに対して、CX―80は6気筒エンジンを縦置きにするFR(後輪駆動)がベースになっている。
パワーユニットは3種類。基本になる3・3リットルディーゼルターボエンジンは最高出力231馬力、最大トルク51・0キロを発生。ディーゼルハイブリッド(HV)はさらに強力で、254馬力のエンジンを16・3馬力のモーターで補助する。もう一つのパワーユニットは2・5リットルプラグインハイブリッド(PHEV、ガソリンエンジン188馬力+モーター175馬力)。満充電にするとモーターだけで67キロ走ることができる(WLTCモード)。
軽油1リットル当たりの燃費はディーゼルが16・7~18・3キロ、HVが19・0~19・2キロとなっている。
車輪の駆動方式は、ベーシックなディーゼル車は二輪駆動と四輪駆動を選べるが、HVとPHEVは四輪駆動のみの設定になっている。
乗車定員は6人または7人。6人乗りは2列目シートがセパレートタイプかウオークスルータイプかを選ぶことができる。3列目シートを頻繁に使う場合にはウオークスルーが便利だし、4人までの乗車が多い場合にはセパレートタイプの方がゆったり座れる。7人乗りは、2列目シートが3人掛けのベンチシートになる。
■上質で静かな室内
試乗車は、上級グレードのXDハイブリッド・プレミアムモダン。車幅が1・9メートル近くあり、正面から見ると分厚いフロントグリルは迫力満点。全長も約5メートルあるので、さらに大きな車に見える。
ドアを開けると、白いナッパレザーのシートが目に飛び込んできた。本革のシートは座り心地がいい。センターコンソールは白っぽい木目調の仕上げ。インパネには薄いグレーの布をあしらっている。上質な内装に思わず声が出たほどだった。
マツダのディーゼルエンジンは音が静かで、回転も滑らかだ。スターターボタンを押してエンジンが始動しても、車内にはかすかな回転音しか入ってこない。走り出しても騒がしくなることはない。同乗者にディーゼルであることを告げなければ、ガソリン車との違いは気付かれないだろう。
CX―80の車重は2トンを超える。しかし最高出力254馬力、最大トルク56・1キロの強力なエンジンはその巨体を軽々と走らせる。スタート時にはさらにモーターがアシストしているはずだが、エンジンがあまりにも力強いので、電動感はほとんどない。モーターの役割は、動力性能の向上というより燃費の改善なのだろう。ディーゼルに対して、HVの燃費改善効果は軽油1リットル当たり約2キロとなっている。
一方で価格設定は、ディーゼルの最上級グレードであるXDエクスクルーシブモード(4WD)が545万500円であるのに対して、HVの最も安いエクスクルーシブスポーツが582万4500円。装備は同一ではないが、40万円近い価格差をどう考えるかはユーザー次第だ。
■余裕の動力性能
話題を動力性能に戻せば、巨大なトルクのおかげで、アクセルをじわりと踏み込むだけで交通の流れに乗った加速が得られ、運転にも余裕が生まれる。
上り坂や高速道路の本線に合流する際などもう一段パワーが欲しいときには、少しアクセルを踏み増すだけでぐっと加速する。一般道でフルスロットルにする機会は恐らくないだろう。
高速道路の巡航も余裕たっぷりだ。直進安定性に優れ、室内はとても静か。運転席・助手席と3列目シートの同乗者との会話もスムーズにできそうだ。
その3列目シートは、座り心地はいいが、フロアから座面までの高さが足りない。身長172センチのリポーターが座ると膝が上がり、内ももが浮き上がってしまう。短距離の移動はいいが、大人6人が乗っての長距離ドライブは厳しそうだ。
サスペンションは、前輪にダブルウィッシュボーン、後輪にマルチリンク形式を採用している。弟分に当たるCX―60と同一の形式だが、セッティングはだいぶ変更されたようだ。CX―60の足回りはかなり硬めで、路面の小さな凹凸がコツコツとドライバーに伝わってきた。道路の補修跡やマンホールなどを乗り越えた際のショックも大きめだった。
それに対してCX―80のサスペンションは、路面からのショックを上手に吸収し、乗り心地がぐっと滑らかになった。道路の補修跡などでサスペンションに大きな入力があると芯の堅さが伝わってくるが、基本的に乗り心地は快適だ。
高速道路では、少しねっとりした粘りのある走行感覚が伝わってきた。試乗で走った紀勢自動車道は制限速度が70キロと低いので、新東名の120キロ制限区間を走ってみたい。
カーブが続く山道などでのハンドリングも素直で、車体の大きさを全く感じさせない。大出力のディーゼルエンジンと優れた操縦性により、運転が楽しめる3列シートSUVに仕上がっている。
【試乗車提供】和歌山マツダ田辺店(田辺市新庄町2157、0739・22・8535)
リポーター 長瀬稚春=運転免許歴49年。紀伊民報制作部長
【データ】 全長×全幅×全高=4990×1890×1710ミリ▽ホイールベース=3120ミリ▽車重=2120キロ▽駆動方式=4WD(四輪駆動)▽エンジン=3283cc水冷6気筒DOHCディーゼルターボ、187kW(254馬力)/3750回転、550Nm(56.1キロ)/1500~2400回転▽モーター=12kW(16.3馬力)900回転/153Nm(15.6キロ)200回転▽燃料消費率=19.0キロ(WLTCモード)▽トランスミッション=8AT(トルコンレス)▽車両本体価格=632万5千円(XDハイブリッド・プレミアムモダン)