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【詳報】「紀州のドン・ファン」遺言書有効 田辺市に約13億円寄付、和歌山地裁

野崎幸助さんが書いたとされる遺言書のコピー(判決文から引用)=画像の一部を加工しています
野崎幸助さんが書いたとされる遺言書のコピー(判決文から引用)=画像の一部を加工しています
判決を受け、報道陣の質問に答える西貴弘総務部長(左)ら=21日、和歌山県の田辺市役所で
判決を受け、報道陣の質問に答える西貴弘総務部長(左)ら=21日、和歌山県の田辺市役所で
 「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した和歌山県田辺市の野崎幸助さん(当時77歳)が生前に書いたとされる遺言書について、親族が無効確認を求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋綾子裁判長)は21日、親族側の主張を退け、遺言書は有効だとする内容の判決を言い渡した。


 遺言書は13年2月8日付で、「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」と赤ペンで手書きされた紙1枚。野崎さんが経営していた会社の役員だった男性が預かっていた。

 市が遺贈を受ける方針を明らかにしたのは19年9月。この時は、野崎さんの財産が約13億2千万円としていた。遺言書は18年9月に和歌山家裁田辺支部で形式的な要件を備えていることが確認され、市は遺贈を受けられる立場になった。

 以降、市は、遺産の内容を確認し、受けるかどうかを検討。相続財産を限度にマイナスの遺産も引き継ぐ「限定承認」の手続きなどを取っていた。19年度以降、弁護士への委託料などとして計1億6千万円超の予算を組んできた。

 親族側は20年4月に提訴していた。

 裁判で、親族側は、野崎さん自身が作成したとは考えられず、市へ遺贈する動機が見当たらないなどと主張。被告は遺言執行者の弁護士で、請求の棄却を求めていた。市は、野崎さんは遺贈の意思や動機を持っていたと主張していた。

 今回の判決は、遺言書の全文を野崎さんが書き、押印したとみるほかないとした。親族側は、野崎さんが生前に書いたとされる書面の筆跡と一致しておらず、別人によって作られた可能性が高いと主張し、それに沿う複数の筆跡鑑定書を出していたが、判決は「採用しがたい」と判断した。

 判決が確定しても、法律上は野崎さんの元妻(28)が遺産の半分を請求できる権利がある。ただ、元妻は野崎さんに対する殺人罪で起訴されており、有罪が確定すると、民法の規定で、元妻は相続できない。このため、実際に田辺市がどれだけ受けられるかは公判の判決が確定するまで分からない。

 親族側の代理人弁護士は、報道各社の取材に「原告にとって残念な結果。判決文を見ると粗雑な内容で、理由付けも不合理なところが多い。代理人としては十分、控訴に値する案件だと考えるが、今後、依頼者(原告)と話した上で判断していく」と述べた。

■「引き続き適正に対応」田辺市

 判決を受け、田辺市の真砂充敏市長は「遺言書が有効であるという市の主張が認められたものと受け止めている。市としては、引き続き適正な対応に努めていきたいと考えている」とのコメントを出した。

 報道陣の取材に対応した市契約課の宮野恭輔企画員は「遺言書は有効であると信じて事務を進めてきた。長い期間の裁判となったので、ほっとしている」と述べた。

 遺産の使い道について、西貴弘総務部長は「市民全体に還元できるような行政活動に活用していきたい」と話した。

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