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ウミガメのふ化低調 和歌山県みなべ町「千里の浜」

アカウミガメの卵のふ化状況を調べる参加者(和歌山県みなべ町山内で)
アカウミガメの卵のふ化状況を調べる参加者(和歌山県みなべ町山内で)
砂の飛散を防ごうと束ねたアシを砂浜に立てるみなべウミガメ研究班のメンバーら
砂の飛散を防ごうと束ねたアシを砂浜に立てるみなべウミガメ研究班のメンバーら
 和歌山県みなべ町山内にある千里の浜でのアカウミガメの卵のふ化率が今季、25・4%と低調だったことがNPOウミガメ協議会などの調査で分かった。昨年と比べ、産卵数は増えたが、ふ化率は大幅に下がった。協議会は「50%はいってほしかった」と表情を曇らせる。

 協議会や町教育委員会によると、千里の浜で今季に確認されたアカウミガメの産卵回数は49回。1981年の調査開始以降で2番目に少なかった昨年の31回を上回った。

 その産卵した49カ所を9月中旬から数回に分けて調査し、状況をまとめた。ふ化率の調査ができた39カ所のうち、8カ所はまったくふ化していなかった。残りの31カ所を個別にみると、ふ化率が最も高いのは96%で、最も低いのは8%、全体では25・4%だった。過去の確かなデータはないが、51%だった昨年よりも大幅に低かった。

 ふ化率が低い要因について、協議会の松宮賢佑事務局長は「ふ化率が低い箇所に産卵の位置、日にちなどで一定の傾向があるわけでもなく、要因ははっきりしない。全くふ化しなかった箇所についても、水に漬かったのかもしれないし、受精卵でなかった可能性もあり、要因は何ともいえない」という。

 今季は昨年より産卵回数が増えたが、ふ化率が大幅に下がり、結果的に生まれた子どもの数は少なかったことになる。松宮さんは「産卵数は気になるが、多く産んでもふ化しないと、ウミガメの数は増えてこない。無事にふ化するよう、これからも活動を続けたい」と話している。

■砂の飛散防止にアシ ウミガメ研究班

 千里の浜で砂が少なくなっていることから、その対策として「みなべウミガメ研究班」などが10月末、砂浜にアシを立てた。風による飛散を防ぐためで、10メートル四方で試験的に実施し、効果を見て広げていきたいという。

 研究班によると「数年前から砂の減少が目立っており、ウミガメが産卵する場所が限られ、産卵できなかったり、産卵しても地下水に漬かってしまったりする可能性がある」という。

 このため研究班は対策として、県外の保護団体が実施している方法を参考に、アシを立てることにした。

 アシはみなべ町気佐藤の湿地で刈り取り、ウミガメ協議会の職員やボランティアらとともに千里の浜の砂浜に立てた。

 約30センチの長さに切ったアシを何本も束ね、1メートル置きに立てていった。

 研究班事務局である町教委教育学習課の前田一樹副課長は「この場所は砂が減り、1メートルほど下がっている。アシで効果があれば、他の場所でもやっていきたい」と話した。

■企業社員が協力

 大手生活用品メーカー「ライオン」大阪工場の社員が今季も、保護活動に協力している。10月末にはふ化状況の調査やアシの設置を手伝った。

 2010年から毎年続けており、今回は10人が参加した。

 ふ化状況の調査では、卵を掘り出して数を数え、ふ化しているかいないかを確認した。浜に打ち上がったごみの回収もした。

 社員のボランティア責任者、安倍貴大さん(51)は「新型コロナにより回数は減ったが、今年も手伝うことができた。活動を始めたころは産卵が200回あったが、最近、減っているのが気になる。産卵しやすい環境になるよう、私たちもお手伝いできればと思う」と話していた。

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