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ゴリラに人間の本質学ぶ 南方熊楠賞の山極さん講演

「ゴリラと歩いて人間の本質を学ぶ」をテーマに語る山極寿一さん(和歌山県田辺市新屋敷町で)
「ゴリラと歩いて人間の本質を学ぶ」をテーマに語る山極寿一さん(和歌山県田辺市新屋敷町で)
 第31回「南方熊楠賞」を受賞した人類学・霊長類学者で、ゴリラ研究の世界的な第一人者として知られる山極寿一さん(70)の記念講演が4月30日、和歌山県田辺市新屋敷町の紀南文化会館であった。「ゴリラと歩いて人間の本質を学ぶ」と題し、人類の進化や現代社会についての考察を語った。

 田辺市と南方熊楠顕彰会主催。当初は昨年5月に開く予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で3度にわたって延期や中止していた。

 山極さんは「人間社会では『負けない』とすることと『勝つこと』を混同しがちだが、本来は違う」と説明。「格差社会で勝ち負けをはっきりさせるサルとは違い、ゴリラにはお互いのメンツを保って引き分けるという共存の方法がある。人間も平等社会で、対等に付き合うことが本分。そのことをゴリラが気付かせてくれた」と話した。

 人間は「共食」や「共同保育」をすることによって、他者への共感力を高めてきたという。一方で、情報通信革命が進んだ現代社会では、そうした共感力を使う機会が失われつつあると問題提起。情報通信機器を賢く使いながら、五感を通じた交流をすることが大切だとして「多様な個性が出会うことによって新しい気付きを得られる社会が必要である」と語った。

■高校生とも対談

 講演後、山極さんと地元の高校生による対談会が南方熊楠顕彰館(中屋敷町)であった。

 対談したのは、田辺高校の国際交流委員会「SEEKER(シーカー)」のメンバーで、3年生の笠松睦さん、岸裏茉波さん、藤田陽乃さん。「未知の世界に挑戦するとき、どうすれば恐怖心に打ち勝てますか」などと質問した。

 山極さんは「怖いと感じたときは、天が与えてくれたチャンスだと思うこと。自分にはそれを乗り越えられる能力があると信じればいい」と励ました。

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