和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

空き家活用で地域活性化 賃貸の仕組み実現へ

改修して活用を計画している印南漁港内の元仮眠施設(和歌山県印南町印南で)
改修して活用を計画している印南漁港内の元仮眠施設(和歌山県印南町印南で)
取り組みについて日裏勝己町長(左から2人目)らに説明する古田高士さん(右)=和歌山県印南町印南で
取り組みについて日裏勝己町長(左から2人目)らに説明する古田高士さん(右)=和歌山県印南町印南で
 地域で増えている空き家の活用策として、個人に出資を募り賃貸物件としてよみがえらせる仕組み作りに、和歌山県印南町にUターンした古田高士さん(39)が取り組んでいる。町内の物件で近く具体的な取り組みを始める予定で、これをモデルケースに普及させていきたいという。

 提案している仕組みは、空き家や空き店舗といった一つの物件に個人や法人が複数で出資することで、取得したり改修したりする費用を捻出するもの。地域活性化のための空き家の活用に、周囲の住民が一緒に参加することで目的意識を持って活動ができる利点がある。おのおのが少額から参加でき、賃貸で得られた利益は配当金になる。

 古田さんは不動産鑑定士で、大学卒業後に東京の不動産業界で会社員として働いた。その関係で全国各地のまちづくりに携わり、古里の印南町を含む和歌山県で貢献したいとの思いを募らせた。和歌山市に昨年8月、地方創生を業務の一つとした不動産コンサルタントの会社を設立。印南町に住まいを移した。

 今回は、同町印南の印南漁港内にある、漁業者が仮眠所として使っていた施設の一部の活用を計画。今回は出資してもらう形ではなく、地元外を含めて寄付を呼び掛けることにした。まず、空き家の活用による地域の活性化に関心を持ってもらって賛同の輪を広げ、その後、出資してもらう形をスタートさせたいという。

 この構想は、自治体が抱える問題解決のための具体的なプロジェクトへの寄付をふるさと納税として扱う「ガバメントクラウドファンディング」として、このほど県に認められた。県内の事例としては初めてという。クラウドファンディングで集まった寄付は、改修費用や勉強会の費用に充て、出資による仕組みをスタートさせる。

 寄付した場合、税控除の対象になり、県外在住者はさらに返礼品として特産品を受け取ることができる。10月初めから募集を始め、21日時点で97人から寄付があった。募集期限の11月末まで協力を呼び掛けたいという。

■ 紀南全体の地域活性化に

 印南町では、空き家の所有者に登録してもらい、利用希望者に町が情報を提供する空き家バンク制度を設けている。空き家の活用による人口減対策や地域活性化に取り組む町と協力しようと、古田さんは日裏勝己町長にも自身の構想を紹介。まちづくりと構想を組み合わせる上で、活用できる資源や現状の課題などについて聞いた。

 空き家や空き店舗対策に取り組む和歌山市では、商店街などでのリノベーションによるまちづくりが進んでおり、古田さんも東京時代からコンサルタントとして携わってきた。全国各地でのまちづくりの事例を基に、紀南でも各地域にある資源を生かしながら、空き家活用ができるとみている。

 古田さんは「これまで働いてきて経験を積んだ分野で、地域活性化に貢献できるのではないかと考えている。この仕組みは都市部では浸透しつつあるが、紀南ではまだなじみがないと思う。地元の皆さんに趣旨を知ってもらえるよう、説明する機会を持っていきたい。印南をモデルケースに和歌山を盛り上げたい」と話している。

 事業の詳細は、クラウドファンディングの情報を集めたウェブサイト「モーションギャラリー」に掲載している。