和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月16日(月)

農業への一歩を応援 みなべ町に移住し援農者紹介

「静かな環境が気に入った。世界農業遺産の梅システムも面白い」という山下丈太さん(和歌山県みなべ町清川で)
「静かな環境が気に入った。世界農業遺産の梅システムも面白い」という山下丈太さん(和歌山県みなべ町清川で)
 梅産地の和歌山県みなべ町で近年、収穫の人手不足が課題となる中、今年5月から同町清川に京都府出身の山下丈太さん(38)が移住し、援農者を紹介する仕事をしている。京都の茶産地、和束町での活動が元で昨年会社を立ち上げ、今季はみなべ町内の農家3軒に7人を派遣している。山下さんは「人手不足の解消だけでなく、農業にチャレンジしたいという人の助けになれば」と話す。

 山下さんは会社員を経て、日本遺産にも認定されている茶産地である和束町で、交流人口を増やそうと2年半観光事業に携わった。しかし、生産現場では茶葉の収穫期である5~7月の人手不足が課題となっていた。「仕事に来てくれる人を紹介してほしい」という声に応え始めたのが、いまの活動の始まりとなった。

 2014年に「ワヅカナジカン」という援農プロジェクトを立ち上げた。援農者がシェアハウスで共同生活を送り、農業や田舎暮らしをするもので、今年で7年目になる。

 取り組みの中で、2年前にみなべ町の梅農家と出会い、梅産地でも収穫期の人手確保に困っていることを知った。自身も活動を横に広げたいと模索していたため、昨年「アグリナジカン」という会社やインターネットサイトを立ち上げて、有料職業紹介業の免許も取得。今年から、みなべ町でも収穫期の働き手を紹介することになった。

 山間部の清川を紹介され他地域から来た援農者が、生活の面で困るだろうと考え、それをサポートしようとちょうど空き家を貸してもらえるという話もあり、妻と1歳半の双子の家族で移住することにした。

 みなべ町では清川や岩代地域の農家3軒で、新型コロナウイルス感染症対策もした上で、援農者7人が訪れた。借りた空き家や離れなどに援農者が住み、10日間から1カ月間くらい、収穫の手伝いに行っている。同社では、和束町とみなべ町、山口県の阿武町で働き手と農家とのマッチングをしており、援農者は80人ほどの登録があるという。

 県の地域課題解決型起業支援事業の補助金を受け、空き家を改修し、宿の許可も得ようと計画しているという。そのことで、ごく短期の働き手の受け入れも可能になると考える。

 都市部の若い人の中には、息苦しさを感じたり、地方での農業や共同生活を通じて新しい生き方を模索したりする人もおり、そうした人たちと農家との間に立って、マッチングしたり、支援したりしたいと考えている。和束町では、援農をきっかけに後に移住した人たちもいるという。

 山下さんは「人手確保の取り組みの一部分がアグリナジカンの取り組み。初めて農業をする人とかチャレンジの意味で来る人を、特に大切にしたいと思っているし、そういう思いを受け止めてくれる農家さんに紹介していきたい。その積み重ねが地域に援農者が集まることにつながると思う」と話す。