和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

エ号乗組員の冥福祈る 串本で規模縮小し追悼式典

新型コロナの影響で規模を縮小し、オンラインでの開催となった追悼式典(和歌山県串本町樫野で)
新型コロナの影響で規模を縮小し、オンラインでの開催となった追悼式典(和歌山県串本町樫野で)
トルコの菓子「ウン・ヘルヴァス」を受け取る大島小学校の児童(和歌山県串本町須江で)
トルコの菓子「ウン・ヘルヴァス」を受け取る大島小学校の児童(和歌山県串本町須江で)
 和歌山県串本町樫野にあるトルコ軍艦エルトゥールル号の遭難慰霊碑前で16日、日本トルコ友好130周年を記念した追悼式典があった。新型コロナウイルス感染症の影響で規模を大幅に縮小し、オンラインも使った開催となったが、両国の関係者らが参列し、事故で亡くなったエ号乗組員の冥福を祈るとともに将来にわたって友好の絆を育んでいくことを誓い合った。

 1890(明治23)年9月16日、樫野沖での遭難で亡くなったエ号乗組員580余人を追悼する式典で、串本町と駐日トルコ大使館の共催。当初は昭和天皇が串本に訪問された6月3日に開催し、両国政府、海上自衛隊、トルコ海軍ほか各界の代表者が参列する形で実施する予定で記念イベントも計画していたが、新型コロナの影響で延期・縮小した。

 当日は新型コロナ対策を講じた上で、現地参列者を田嶋勝正町長、結城力町議会議長ら7人に限定。式典の模様は動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信された。

 式典では、オンラインで参列された日本・トルコ協会総裁の三笠宮彬子さまが「130年前にエ号が遭難したこの日に、日本とトルコ両国をオンラインでつなぎ、串本町の皆さまとともに、両国で同じ時を共有し、共に祈る機会を持てましたことは、世界的に皆が同じ苦しみを抱いている今だからこそできることであり、日本とトルコの友好の歴史の1ページに刻まれる特別な出来事になるでしょう」とあいさつ。

 トルコのハサン・ムラット・メルジャン特命全権大使は「エ号の悲惨な事故は惨事として歴史に刻まれながらも、一方で両国民の間に世界で他に類を見ない友情を生むきっかけとなった。串本の祖先の方々が、けがを負った将兵たちに差し伸べた救助の手と優しさは、互いを知らない、言葉を分かり合えない、1万キロ以上離れた地に暮らす人々の間にも真の友情が芽生えるのだということの証しとなった」とビデオレターでメッセージを寄せた。

 慰霊碑に献花した田嶋町長は「殉難将士の尊い犠牲のもと、生存者の救助に当たった大島島民の献身により結ばれた両国の絆は、世代を超えて育まれ、両国の友好関係を支えている。この地で殉難将士の御霊をお守りし、この史実と助け合う心の大切さを語り継ぎ、かけがえのない絆を育んでいくことが、現在に生きるわれわれの使命であると考えている」と式辞を述べた。

■ 児童らにトルコの菓子

 トルコ文化に触れてもらおうとこの日、町内の小中学校やこども園でトルコの伝統的な小麦粉菓子「ウン・ヘルヴァス」と、町とトルコの友好の歴史などについて書いたペーパーランチョンマットが子どもたちに配られた。

 同町須江の大島小学校(布引伸幸校長、31人)では、体育館で集会を開き、犠牲者に黙とうをささげた後、各教室で児童に菓子を配った。

 集会で布引校長は、異国の地で無念の思いで亡くなったトルコの人たちを島民が130年間、弔い続けていると述べ「皆さんも、その思いを受け継ぐ一人になってほしい」と呼び掛けた。

 菓子を受け取った吉田陽輝君(5年)は「校長先生が言っていたように、家でこのお菓子を食べる時、もう一度亡くなったトルコの人たちのことを思い出したい」、亀井侑愛さん(5年)は「多くのトルコの人がこの島で亡くなったのは悲しいこと。安らかに眠ってほしいと思う」と話した。