【動画】梅と菜の花、そして海 ガイドと巡る南部梅林、和歌山
「一目百万、香り十里」とうたう、観梅の名所「南部梅林」(和歌山県みなべ町晩稲)が見頃となっている。26日、みなべ観光ガイドの会の案内で、梅林内を周遊するAコース(約4キロ)を歩いた。春を感じさせる穏やかな日差しの下、梅や地域の歴史、道沿いに咲く野花の話に耳を傾けながら、のんびり散策を楽しんだ。(中沢みどり)
案内してくれたのは、ガイド歴約10年の大野コマサさん(85)=みなべ町東本庄。入園門前に集合し、出発して早々「みかへり坂」と刻まれた石碑の前で、大野さんが足を止める。
「昔、この道はもっと急な坂で幅も狭かった。地元の人たちが道を直す工事をし、完成祝いに招かれた紀州徳川家15代当主、徳川頼倫候が梅林からの景色を気に入って、何度も振り返りながら帰った。その時に残した字を、地元の人が写して碑にしたの」
歴史の一端に触れながら、坂を上っていく。道の脇では、土産物店が取れたてのダイコンや梅干し、梅の花枝などを販売している。
少し進むと、大野さんは道を右脇にそれた。そこには小さなお堂があった。
「ここはお薬師さん。地域の人が大切に祭っているのよ」。お堂の近くには大きな石が数個。力石といい、昔は持ち上げて力比べをして遊んだそうだ。
少し進んで料金所を過ぎると、左側にみなべの梅産業発展を導いた先覚者・内中源蔵の碑がある。その隣には小殿神社があり、境内に群生するイスノキ(マンサク科)は県の天然記念物に指定されている。
大野さんが、落ちている木の実のような物を拾って口に当てた。「これはイスノキの虫こぶで、瓢の実(ひょんのみ)。吹くとひょう、ひょうと音が鳴る。晩秋の季語になっているの」。確かに、もの悲しいような音が辺りに響いた。
そこから勾配のきつい坂を上ると、左に展望台、右にはイベント会場や売店が並ぶ「梅林公園」がある。
梅林公園に着くと、大野さんが「紀州梅音頭」を歌いながら、踊ってくれた。実は、大野さんは「梅の里民謡クラブ」の座長で、歌や踊りはお手の物なのだ。
公園を出て、さらに上へ上へと進む。急斜面にも梅が植えられ、白い花々が目を楽しませてくれる。足元にはホトケノザやオドリコソウなどの小さな花々が咲き、大野さんが一つ一つ、名前を教えてくれた。
■ぐるっと周遊
坂を上り切ると、尾根沿いに右へ回っていく。高台からの眺望は格別だ。町並みの奥には陽光に輝く海が見え、遠く四国もうっすら望むことができた。
ぐるっと回り込んだ辺りにA・Bコースの分かれ道があり、Aコースへと進む。そこから少し歩いた右側の小高い所に今年、フォトスポットができた。夕日を望める時間に訪れるのがお薦めだそうだ。
ここからは下り坂。雑談しながらしばらく歩き続けたところに、息をのむ絶景が広がっていた。
梅の白い花々が左右に広がり、その中に1本、紅をさしたような紅梅の赤。奥にはみなべの町並みや青い海が見渡せ、足元は菜の花が鮮やかな黄色で彩る。甘く香る花々の間を、ミツバチが忙しそうに飛び交っていた。
ここまで来ると、歩き始めた入園門に帰り着くまで、あと一息だ。
大野さんが、南部湾に浮かぶ鹿島を歌詞に取り入れた「鹿島音頭」を歌い出す。その歌声に耳を傾けながら、ゴールした。
1時間半ほどで周遊できるコースを、大野さんの話や歌、踊りを楽しみ、所々で足を止めながら約2時間40分かけ、のんびり散策した。観梅はもちろん、歴史や自然を満喫した、ぜいたくな時間だった。
■メモ
南部梅林は、梅の里観梅協会が運営。開園期間は3月9日までで、午前8時~午後5時。入園料は高校生以上500円、小中学生200円。
みなべ観光ガイドの会による梅林コースの案内は事前申込制で、9人までは基本的に無料。10人以上はガイド1人(15人まで)につき3千円。申し込みは原則2週間前までだが、1週間前までなら対応できる場合もある。
申し込みは、みなべ観光協会のホームページ(https://www.minabe-kanko.jp/guideform)から。問い合わせは、ガイドの会事務局の町うめ課(0739・33・9310)へ。
案内してくれたのは、ガイド歴約10年の大野コマサさん(85)=みなべ町東本庄。入園門前に集合し、出発して早々「みかへり坂」と刻まれた石碑の前で、大野さんが足を止める。
「昔、この道はもっと急な坂で幅も狭かった。地元の人たちが道を直す工事をし、完成祝いに招かれた紀州徳川家15代当主、徳川頼倫候が梅林からの景色を気に入って、何度も振り返りながら帰った。その時に残した字を、地元の人が写して碑にしたの」
歴史の一端に触れながら、坂を上っていく。道の脇では、土産物店が取れたてのダイコンや梅干し、梅の花枝などを販売している。
少し進むと、大野さんは道を右脇にそれた。そこには小さなお堂があった。
「ここはお薬師さん。地域の人が大切に祭っているのよ」。お堂の近くには大きな石が数個。力石といい、昔は持ち上げて力比べをして遊んだそうだ。
少し進んで料金所を過ぎると、左側にみなべの梅産業発展を導いた先覚者・内中源蔵の碑がある。その隣には小殿神社があり、境内に群生するイスノキ(マンサク科)は県の天然記念物に指定されている。
大野さんが、落ちている木の実のような物を拾って口に当てた。「これはイスノキの虫こぶで、瓢の実(ひょんのみ)。吹くとひょう、ひょうと音が鳴る。晩秋の季語になっているの」。確かに、もの悲しいような音が辺りに響いた。
そこから勾配のきつい坂を上ると、左に展望台、右にはイベント会場や売店が並ぶ「梅林公園」がある。
梅林公園に着くと、大野さんが「紀州梅音頭」を歌いながら、踊ってくれた。実は、大野さんは「梅の里民謡クラブ」の座長で、歌や踊りはお手の物なのだ。
公園を出て、さらに上へ上へと進む。急斜面にも梅が植えられ、白い花々が目を楽しませてくれる。足元にはホトケノザやオドリコソウなどの小さな花々が咲き、大野さんが一つ一つ、名前を教えてくれた。
■ぐるっと周遊
坂を上り切ると、尾根沿いに右へ回っていく。高台からの眺望は格別だ。町並みの奥には陽光に輝く海が見え、遠く四国もうっすら望むことができた。
ぐるっと回り込んだ辺りにA・Bコースの分かれ道があり、Aコースへと進む。そこから少し歩いた右側の小高い所に今年、フォトスポットができた。夕日を望める時間に訪れるのがお薦めだそうだ。
ここからは下り坂。雑談しながらしばらく歩き続けたところに、息をのむ絶景が広がっていた。
梅の白い花々が左右に広がり、その中に1本、紅をさしたような紅梅の赤。奥にはみなべの町並みや青い海が見渡せ、足元は菜の花が鮮やかな黄色で彩る。甘く香る花々の間を、ミツバチが忙しそうに飛び交っていた。
ここまで来ると、歩き始めた入園門に帰り着くまで、あと一息だ。
大野さんが、南部湾に浮かぶ鹿島を歌詞に取り入れた「鹿島音頭」を歌い出す。その歌声に耳を傾けながら、ゴールした。
1時間半ほどで周遊できるコースを、大野さんの話や歌、踊りを楽しみ、所々で足を止めながら約2時間40分かけ、のんびり散策した。観梅はもちろん、歴史や自然を満喫した、ぜいたくな時間だった。
■メモ
南部梅林は、梅の里観梅協会が運営。開園期間は3月9日までで、午前8時~午後5時。入園料は高校生以上500円、小中学生200円。
みなべ観光ガイドの会による梅林コースの案内は事前申込制で、9人までは基本的に無料。10人以上はガイド1人(15人まで)につき3千円。申し込みは原則2週間前までだが、1週間前までなら対応できる場合もある。
申し込みは、みなべ観光協会のホームページ(https://www.minabe-kanko.jp/guideform)から。問い合わせは、ガイドの会事務局の町うめ課(0739・33・9310)へ。