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2025年02月20日(木)

半島の防災考える 国土強靱化、和歌山市でシンポジウム

防災の取り組みなどについて話し合う「国土強靱化シンポジウム」(20日、和歌山市で)
防災の取り組みなどについて話し合う「国土強靱化シンポジウム」(20日、和歌山市で)
 過去の大地震の経験を踏まえ地域防災力の強化について議論する「国土強靱化(きょうじんか)シンポジウムin和歌山」が20日、和歌山市のホテルであり、防災に取り組む自治体の首長や会社社長らが参加。超高齢社会の中で、防災にどう対応していくかや、半島の地理的課題への向き合い方などについて話し合った。


 内閣官房国土強靱化推進室主催。4回目で、県内では初めて開いた。県などが共催し、紀伊民報が協力した。パネル討論では6人のパネリストが登壇し、東京都立大の中林一樹名誉教授が進行した。

 オンラインで参加した石川県七尾市の茶谷義隆市長は、支援を受ける上での半島という地理的条件について言及。「鉄道や道路が使えなくても空港や港が充実していれば、さまざまな支援が受けられたのではないか。紀伊半島も同じ。しっかりと整備し対応できるよう考えていかないといけない」と話した。

 田辺市の真砂充敏市長も「地理的条件によって被害が変わることを再認識し『半島防災』について考えることが大事」と強調。孤立集落への対応について、防災行政無線を利用し、双方向で地域からも情報を得られるようにする取り組みなどを示し「情報を得る仕組みをいかに充実させていくかが大事」と話した。

■超高齢社会に対応

 超高齢社会の中での課題については、茶谷市長が少子高齢化が能登半島地震の被害悪化につながったとの見方を示し「子や孫が住まないので、費用をかけてまで耐震化しないということが被害を大きくした原因の一つではないか」と述べた。また、介護施設が被災し、高齢者の行き場がなくなっていたといい「いかに高齢者を守っていくかが重要と感じている」と話した。

 全国災害ボランティア支援団体ネットワークの神元幸津江・事業部リーダーは、過去の災害で「(避難後の)高齢者が取り残される状況があった」と指摘。支援制度の申請方法が分からない、買い物や病院に行けないなどの事例を示した。仮設住宅で機器の使い方が分からず、2日間暗い中で暮らした高齢者もいたとして「高齢化が進む中、設計段階からバリアフリーを検討するなど、業者を含めて民間を交えた取り組みを考えていければいい」と提案した。

■AIで復興活動を

 このほか、白浜町にオフィスがあり、紀南などで防災の課題解決事業に取り組むIT企業「ウフル」(東京都)の園田崇史社長は、データや人工知能(AI)の力を活用した復興活動を提案。国全体で、通信環境確保の仕組みを整えることも重要だとした。漁村研究に携わる「漁村計画」の富田宏社長は、和歌山県の沿岸に漁港や漁村が高密度にあると指摘し「復興計画を事前に作っておくことが大事だが、課題が多い」と問題提起。国土強靱化推進室の丹羽克彦次長は「日本に住む以上、自然災害は覚悟しなければならない。しっかり準備を進めたい」、県出身で元体操五輪代表の田中理恵さんは「体操クラブで指導する子どもたちがパニックにならないよう、もう一度話し合いたい」と話した。

 パネル討論の前には、丹羽次長、県の河野眞也危機管理部長、「稲むらの火の館」(広川町)の﨑山光一館長の講演もあった。