和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

【動画】強風で打ち上げ延期 民間ロケット「カイロス」、和歌山・串本

14日のロケット打ち上げ中止を発表するスペースワン広報担当者(14日午前10時46分ごろ、和歌山県串本町で)
14日のロケット打ち上げ中止を発表するスペースワン広報担当者(14日午前10時46分ごろ、和歌山県串本町で)
橋杭岩前でカメラを構える写真愛好者ら(14日、和歌山県串本町くじの川で)
橋杭岩前でカメラを構える写真愛好者ら(14日、和歌山県串本町くじの川で)
 宇宙事業会社「スペースワン」(東京)は14日、和歌山県串本町田原の発射場「スペースポート紀伊」から同日午前11時に打ち上げを予定していた、小型ロケット「カイロス」2号機の打ち上げを延期した。強風が要因という。同社は午後1時前の説明会で、気象条件が整えば15日午前11時に再挑戦したいとの意向を示した。


 串本町内のホテルに設けられた会見場では午前10時半ごろ、同社からメールで日程変更の知らせを受けた報道陣が慌ただしく動いた。10時45分ごろ、同社の広報担当者が「本日のロケットの打ち上げは中止となりました。理由は天候です。風が要因です」と発表した。

 岸本周平知事は「天候の関係で延期ということで、よくあること。期待が高まるほど成功した時の喜びは増すのではないかと思っている。次の打ち上げに期待したい」と語った。

 カイロスは全長約18メートル、重さ約23トンの固体燃料ロケット。初号機は3月13日、政府の小型人工衛星を搭載して打ち上げられたが、5秒後に自律飛行安全システムが作動し、飛行を中断。2号機は、台湾の宇宙機関の衛星など計5機を搭載し、日本では民間初となる人工衛星の軌道投入を目指して準備を進めてきた。

 同社はキヤノン電子やIHIエアロスペースなどが出資して2018年に設立。30年代に年間30機の発射を目標としており、高頻度での打ち上げを実施するため、打ち上げの射点を現状の1カ所から増やすことも計画している。

■急きょ中止にどよめき 「またか」「次こそは」

 最南端の空を飛ぶことはなかった。14日の小型ロケットの打ち上げは直前で中止となった。串本町に集まっていた宇宙ファンからは「またか」と落胆する声もあったが、多くが「次こそは」と宇宙への挑戦にエールを送っていた。

 田原の田原海水浴場に設けられた公式見学場では午前10時50分ごろ、打ち上げ延期の報告があり、観客約2500人からため息が広がった。

 新宮市から家族3人で訪れた会社員山下真広さん(39)は3月の打ち上げにも訪れたといい「次は飛ぶかなと期待していたが残念。日が決まったらまた来たい」、長女の結奈さん(10)は「次も見たい。カイロス頑張れ」とエールを送った。

 くじの川の橋杭岩前の駐車場は14日午前0時にはほぼ満車になった。早朝から写真愛好者らが三脚を構え、発射の時を待っていた。「中止らしい」という話が広がると、早々に機材を片付けて観光に切り替えたり、帰路を急いだりした。

 串本町出身で和歌山市在住の会社員康原泰志さん(55)と妹で大阪府在住の会社員芳美さん(44)は「地元からロケットが発射されるのは誇らしくて、友達にも自慢している。写真と動画を撮ろうと未明に到着して、待っていた。延期は残念だけど、風が強いと感じていた。次回もぜひ来たい。ただし平日は避けてほしい」と話した。

 奈良県から妻と孫を連れて訪れたという自営業の土橋正彦さん(82)は「ロケットが好きだが、種子島まではなかなか行けない。串本ならと田辺市に前泊して早朝到着した。本当に残念だが、次回も必ず来る。次こそは打ち上がる瞬間をこの目で見たい」と車に乗り込んだ。

 田原の見学場で打ち上げを待っていた田嶋勝正町長は「上空の風が強いと報告を受けた。必ず打ち上がると思っていたが、自然のことなので仕方がない。全国から集まってくれたロケットファンに申し訳ない。次回は明日にでも打ち上げてもらいたい。町が盛り上がり、大勢をお迎えできる環境が整っている」と話した。