和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

小さな命に寄り添って リトルベビー冊子 和歌山県内で配布

和歌山県が発行している「わかやまリトルベビーハンドブック」
和歌山県が発行している「わかやまリトルベビーハンドブック」
 小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録する冊子「リトルベビーハンドブック」が全国に広まり、和歌山県版も病院や市町村で配布されている。標準とされる成長の目安にとらわれず、一人一人に合わせて活用できる。さまざまなハードルを乗り越えながら懸命に生きる赤ちゃんと家族に寄り添う一冊だ。


 「あやすとよく笑いますか」(生後3~4カ月ごろ)。「指で小さい物をつまみますか」(生後9~10カ月ごろ)。自治体から交付される「母子健康手帳(母子手帳)」には、月齢や年齢に合わせてこのような設問があり、親が「はい」「いいえ」で答える欄がある。

 しかし、小さく生まれた赤ちゃんの場合は、母子手帳の目安に当てはまらないことも多いため、回答が「いいえ」ばかりになることがある。身長や体重の目安となる「発育曲線」も参考にならないという問題があった。

 ハンドブックの配布対象は、出生時の体重が1500グラム未満、または2500グラム未満などで支援が必要な赤ちゃん。

 成育状況について「はい」「いいえ」で答える欄はなく、できた日付を記入する形式。「しかめ顔などの表情をする」といった各項目に「表情豊かなしるしです。次は笑いますよ」などと家族への一言もそれぞれ添えられている。

 身体測定のグラフには、母子手帳にはない身長40センチ、体重1キロ未満の記入欄がある。「先輩ママ」や医師、保健師ら関係者からのメッセージが多く盛り込まれているのも特徴だ。

 「個人差も大きい」と記した上であえて盛り込んだ目安もある。1500グラム未満で生まれた赤ちゃん(極低出生体重児)の発育曲線。厚生労働省が2023年に発表した研究データだ。

 県によると、23年に県内で生まれた赤ちゃんは4901人。そのうち2500グラム未満は439人。1500グラム未満に限ると39人。ハンドブックは対象の赤ちゃんの家族に病院で渡されるほか、各市町村などでも手に入る。



 助産師・田中知恵さん(55)=上富田町岩田=の話

 どんな赤ちゃんでも悩みや不安はあると思うが、特に小さく生まれた場合は、常に緊張した状態で接している母親が多いと感じる。参考にできる本なども少なく、手探りで育児をしているようだ。

 健診時などにハンドブックがあれば、情報共有や相談がスムーズにできると思う。行政関係者や地域住民の間で周知が進み、小さく生まれた赤ちゃんや家族に対する社会の理解が深まることも期待したい。