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2024年11月25日(月)

実践女子大学食生活科学科の守田准教授が特許を取得。コメを使ってつるつる、もちもちの新食感を実現。低迷する消費の拡大に期待



 実践女子大学(東京都日野市、難波雅紀学長)の守田和弘准教授(食生活科学科、食品加工学専攻)は、新食感を生み出すコメを原料にした新素材の開発に成功し、特許を取得しました。これまでコメ素材の原料にはなかった「つるつる」「もちもち」としたなめらかな食感や甘みなどの風味を持つのが特徴。米粉に比べて製造コストが安いうえ、パンやケーキなどの小麦粉由来の加工食品への用途が可能で、コメの消費拡大につながることが期待できます。




新素材は、水加減で、液状、ペースト状、ゲル状に。あらゆる小麦製品に代用可能

 新素材は、コメ自体を水と共に磨砕した後、炊飯することで、液状、ペースト状、ゲル状にしたのが特徴です。具体的にはコメを十分な吸水が得られるまで水に浸して柔らかくした後、ミキサーで磨砕し、炊飯器などで炊飯するというものです。
コメは玄米、発芽玄米、分つき米、胚芽米、白米、無洗米、雑穀米などどれでも使用可能。水の量により、液状、ペースト状、ゲル状に硬さの加減を制御することができます。
 食味の変化を見るため、新素材と従来の原料を使った団子やパンを製造し、比較する実験を行いました。まず、白米を使った新素材と上新粉(米粉)を使った団子をそれぞれ調理。22人のゼミ生らに外観、食感、もちもち感、食べやすさ、味など8項目について官能評価をしてもらったところ、すべての項目で新素材の団子が上新粉の団子を上回る評価でした。特に、もちもち感で高い評価が得られました。

パンはふっくら、もちもち、甘みも

さらに、白米を使った新素材でパンの加工にも取り組みました。すると、白米の新素材と小麦粉を50%ずつ配合したパンは、小麦粉100%のパン、市販の米粉パンに比べ、もちもち感が強く、甘みがあり、風味が良いという評価が得られました。小麦粉60%、玄米を使った新素材40%の配合で作ったパンも、玄米粉100%のパンと炊飯処理をせずに磨砕した玄米ペーストで作ったパンと比較すると、小麦粉60%、玄米を使った新素材40%の配合で作ったパンが、強いもちもち感を有し、明らかに異なる食感を呈することがわかりました。
 守田准教授によると、このほかにも、新素材はうどん、そば、スパゲティなどの麺類、ケーキ、ドーナツ、クッキーなどの菓子類、てんぷら、フライなどの揚げ物類の加工食品にも使用できるとのことです。

ざらつきなくすため、逆転の発想を試み、長年の研究が実る

 守田准教授は富山県のコメ農家の出身。同県農林水産総合技術センター食品研究所の研究員時代からコメの消費拡大に関心を持ち、食品素材を研究する中でコメ加工のアイデアを温めてきました。新素材の開発は本学に赴任した2020年から本格的に取り組み、加熱、冷却、磨砕、濃縮などの実験を繰り返し、食味などを試してコメがおいしくなるための素材の開発を研究してきました。最終的には、加熱後に磨砕するという従来からのコメ加工の常識とは逆に、水に浸した後に磨砕する「湿式粉砕」を採用した結果、人がざらつきを感じるといわれる20ミクロン以下の粒子にすることができるようになり、つるつる、もちもちした舌触りのなめらかな食感を得られたとのことです。もちなどに加工して喉に詰まりにくい高齢者の介護食としての用途に最適なほか、パンに加工した場合には空気を中に閉じ込めることでふっくらとした仕上がりにできるそうです。また、食感や風味が独特の玄米については、ビタミンB1の栄養はそのまま、より甘みが増すという特徴があります。

守田准教授「誤えん予防に新しい介護食にも適している」

 日本の食料自給率は38%。パンなどに需要が多い小麦は約9割を輸入に頼っています。これに対し、コメの自給率はほぼ100%。しかし、消費量は年々減少し、2013年を境にパンの消費金額がコメを上回っています。コメの消費拡大が進めば、荒廃した農業の再生や農業ビジネスの展開、食料安全保障の確保にもつながります。食味が良くなることによる玄米の消費拡大は、米ぬかの食品ロスにも役立ちます。守田准教授は「農家出身なので、昔からコメの消費拡大をできないかと思っていました。せっかく大学で開発した食品加工技術なので、広く世の中で使ってほしい。コメ由来の未知の食感となり、食品メーカーの新商品開発にも期待できるのではないか。特に、もち米でなく、うるち米(白米)を原料にした新素材で作ったもちは、つるつるとしてのどに詰まりにくくなっており、誤えんを予防するための新しい介護食にも適しているのではないか」と話しています。



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