和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月24日(火)

秋祭り、伝統の獅子舞奉納 笛や太鼓の音響く、和歌山県田辺市

継桜王子の境内で高々と立ち上がった姿を披露する野中の獅子舞(3日、和歌山県田辺市中辺路町で)
継桜王子の境内で高々と立ち上がった姿を披露する野中の獅子舞(3日、和歌山県田辺市中辺路町で)
てんぐも登場した上野の獅子舞(3日、和歌山県田辺市下川下で)
てんぐも登場した上野の獅子舞(3日、和歌山県田辺市下川下で)
 秋晴れに恵まれた3日、和歌山県紀南地方の各地で秋祭りが営まれた。田辺市内の山間部では、県の無形民俗文化財に指定されている伝統の獅子舞が奉納された。多くの参拝者や見物人が見守る中、笛や太鼓の音が地域に響き渡った。

■野中の獅子舞

 世界遺産登録20周年を迎えた熊野古道が通る田辺市中辺路町では、約700年の歴史があるとされる「野中の獅子舞」が、近露と野中にある神社で奉納された。

 野中の獅子舞を継承している「近野獅子舞団」(井谷充孝団長、15人)が近露王子(近露)と近野神社(同)、野中の一方杉で知られる継桜王子(野中)の3カ所で奉納。継桜王子では美しい社殿の前で笛や太鼓の音色に合わせ「乱獅子」「剣の舞」など5演目を披露し、見物人から大きな拍手が送られた。

 妹と訪れていた太地町の女性(62)は「野中は母のふるさとで、おじいちゃんに連れられて小さな頃に獅子舞を見に来たことがあると思う。とても見たかったので感激した」と笑顔を見せた。

 井谷団長(47)は「先輩方がつないできた歴史の中で、世界遺産登録20周年の節目に奉納することができてとても良かった。天候に恵まれ、外国の方も含めてたくさんの方の前で披露できて大変幸せ」と話していた。

 中辺路町誌によると、野中の獅子舞は南北朝のころ、南軍であった熊野武士たちが士気を鼓舞するために始めたのが発祥という説もある。

■上野の獅子舞

 田辺市下川下の春日神社では、県の指定無形民俗文化財「上野の獅子舞」が奉納され、見物人を楽しませた。

 9月から練習を続けてきたという上野獅子舞保存会(湯川剛会長、15人)が「神ばやし」や「乱獅子」「くぐり」などを披露した。

 湯川会長(58)は「少ない人数、限られた時間での練習だったけど、うまくできたと思う。もっと会員を増やして、今後も盛り上げていきたい」と話した。

 長崎県から帰省して長女の宮参りで訪れたという夫婦は「獅子舞は迫力があって見応えがあった。この神社に来られて良かった」と喜んだ。

 上野の獅子舞は、室町時代に八郎又衛門によって伝えられたといわれ、五穀豊穣(ほうじょう)と住民の安全を祈願して舞われる。