和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月18日(金)

資源枯渇と廃棄物処理の課題解決に資する「循環型建築」の実現に向けた活動を開始

第1弾として建設業界におけるサーキュラーエコノミーの知見を集約した「Circular Idea Catalog」の開発に取り組む

株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦、以下「日建設計」)は、社会や経済のサステナビリティを追求する取り組みのひとつとして、建設業界のサーキュラーエコノミーを推進する活動「Circular Design Collective(サーキュラーデザインコレクティブ)」を発足しました。活動の第1弾として、建築・土木に携わるすべての人が「循環型建築(Circular Architecture)」の実現に向けて取り組むことができる環境づくりを目指し、そのアイディアやデザイン手法などのノウハウを集約した「Circular Idea Catalog(サーキュラーアイディアカタログ)」の開発を開始します。


社会背景―今、建設業界において「循環型建築」が求められる理由―
循環型社会への移行を巡り、世界的な規制強化、産官学のパートナーシップ発足、ビジネス市場への企業参入などの動きが見られ、国内外問わずサーキュラーエコノミー推進の機運が高まっています。一方で、サーキュラーエコノミーの世界動向を取りまとめた年次報告書「Circularity Gap Report(サーキュラリティ・ギャップ・レポート)」2024年版※1によると、サーキュラーエコノミーをテーマとした記事や議論の量は、5年前と比較し約3倍に増加しているにも関わらず、社会・経済の循環性は依然として改善が見られず低下し続けています。
※サーキュラーエコノミー:経済活動において原材料や製品を可能な限り廃棄せずに再利用することで、環境負荷低減や持続可能な資源利用を達成する循環型のしくみ

世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約40%は、建物の建設、使用、解体に起因しており、建設および解体プロセスは、すべての材料消費のほぼ3分の1を占めています※1。また、使用可能な資源量に対して地球単位では1.7倍、日本国内だと6.4倍※2消費し、建設産業廃棄物の最終処分場の残余容量は17年分、首都圏に限ると6年分と予測されています※3。遠くない未来に起こり得る「資源枯渇」と「最終処分場不足」の2つの直面課題を踏まえ、建設業界における「使う資源」と「捨てる資源」を削減する「循環型建築」実現への仕組みづくりが急務となっています。

このような背景から、建設業界におけるサーキュラーエコノミーとカーボンニュートラル推進の一環として、日建設計は「Circular Design(循環型建築を実装するためのデザイン手法)」に関する「ヒト」「モノ」「コト」を研究し、集合知化する「Circular Design Collective」を発足し、循環型建築の実現に向け始動しました。


目指すべき「循環型建築」とは
「Circular Design Collective」は建築・土木業界から「廃棄物」という概念をなくすというミッションを掲げ、目指すべき「循環型建築」を「Vernacular(全ての部材は地球に還る)」、「Design for Disassembly(設計時から解体後の循環を考える)」、「Upcycling(廃棄物に命を吹き込む)」の3つの考えに分類・定義づけしました。


サーキュラーエコノミー先進地域である欧州では、いずれ新品の資材が入手困難となる遠くない未来を見据え、建設廃棄物のアップサイクルや設計時から解体時の分解を容易にすることの重要性に気づき、同様の考えが浸透し始めています。例えば、建設廃棄物のアップサイクルでは、外装ガラスの再利用で32%、外装サッシュの再利用で87%のCO2削減につながった事例※4があり、カーボンニュートラルへの貢献が期待できることを示唆しています。また、再利用にかかるコストは新規建材採用時と概ね同等であること、さらに適材適所による最適化利用を図れば50%のコスト減につながる試算※4もあり、経済的メリットも享受できる可能性も秘めています。日建設計では、これまで「負の資産」と捉えられてきた建設廃棄物を、環境的価値および経済的価値の両方持った「正の資産」へ転換する考えを推進するとともに、設計時から分解容易性を考慮するなど、日本国内での新たな設計の在り方を提言していきます。

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図:「Circular Architecture」の分類と「Design for Disassembly」の概念

「Circular Design」のアイディアを総覧可能なカタログ「Circular Idea Catalog」プロジェクトの開始
サーキュラーエコノミーに資する取り組みや技術、素材などの情報は存在する一方で、様々な媒体に情報が分散し、個々のプロジェクトに適した情報を拾い上げることが難しい状況にあります。そこで日建設計は、「Circular Design Collective」の最初の取り組みとして「循環型建築」の事例のほか、それを構成する「Circular Design」のアイディアや「Circular Design」に取り組む上でパートナーとなりうる社外専門家情報のカタログ化を実施し、社内で運用を開始しました。建築・土木に携わる誰もが「Circular Design」に取り組むことができる環境をつくり、「循環型建築」の価値を社会に広く提供・浸透させていきます。

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図:「Circular Idea Catalog」のイメージ



今後の展望
建設廃棄物のアップサイクルをはじめとする「循環型建築」への取り組みは、環境および経済へのポジティブな効果が期待できることが欧州の事例によりわかってきています。日建設計はこれらの取り組みのベースとなる「Circular Design」を浸透させて、社会実装することが重要であると考えています。そのため自ら「Circular Design」を実践して、そのアイディアやノウハウを蓄積するとともに、それらを実践する社外のパートナーを募集し、再現性の高い情報を「Circular Idea Catalog」に集約・共創していきます。長期構想ではカタログを誰もがアクセス可能なデータベースとしてオープンソース化し、建築設計分野だけでなく、建設業界全体における「Circular Design」の知見を建築・土木業界の当たり前にしていく考えです。「社会環境デザイン」を掲げる日建設計では、今後も環境や社会の課題解決に向けた取り組みを推進してまいります。

※1:The Circularity Gap Report 2024(https://www.circularity-gap.world/2024

※2:Global Footprint Network Nowcasting the World's Footprint & Biocapacity for 2024
※3:国土交通省 建設リサイクル推進計画2020(案)~「質」を重視するリサイクルへ~(https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000247.html

※4:Lendager, A., & Pedersen, E. (2021). SOLUTION. Danish Architectural Press. ISBN: 9788774074731.

日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
URL:https://www.nikken.jp/ja/



本件に関するお問合わせ先
株式会社日建設計  広報室  Tel. 03-5226-3030  e-mail:webmaster@nikken.jp

関連リンク
The Circularity Gap Report 2024
https://www.circularity-gap.world/2024
国土交通省 建設リサイクル推進計画2020(案)~「質」を重視するリサイクルへ~
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000247.html


プレスリリース詳細へ https://digitalpr.jp/r/95843
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