和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

田辺らしい自治 新たなモデル地域に上芳養、和歌山

上芳養の良いところ、不便なところについて意見を出し合う会合の参加者(和歌山県田辺市上芳養で)
上芳養の良いところ、不便なところについて意見を出し合う会合の参加者(和歌山県田辺市上芳養で)
 和歌山県田辺市のモデル事業として、上芳養地域で「田辺らしい自治の仕組みづくり」の検討が始まった。3年間かけて取り組む。少子高齢化や社会情勢の変化で自治会の運営が難しくなっていることから、市は地域課題に対応できる新しい自治の形を模索している。モデル事業は昨年度の新庄に続いて2地域目。


■いいとこ、不便なとこ 上芳養

 上芳養公民館で7月下旬、「地域についてみんなで話し合いませんか」をテーマにした集会があった。約40人が地域の良いところや不便なところを出し合い、現状や今後の在り方を考えた。

 上芳養地域には町内会、小学校、中学校、公民館がそれぞれ一つずつある。この日はさまざまな団体の代表らが集まった。

 地域の良いところでは「自然の豊かさ」「おいしいミカン」「地域のつながりの濃さ」、不便なところでは「インフラの整備が進んでいない」「交通の便が悪い」「宅地が少ない」などの意見があった。

 会の進行を務めた「わかやまNPOセンター」理事長の志場久起さんは「まちを良くしたい人はいても、悪くしたい人はいないはず。人付き合いが苦手な人もいるだろうが、他者を批判せずに、褒め合う文化を進めてみては。何か楽しいことをやっているとうわさになるような上芳養を目指そう」と呼びかけた。

 町内会の船本幸雄会長は「地域にまだまだ活力があるうちに、次代の地域について考えるチャンスをもらった。いろいろな意見が出ると思うが、どんな地域像が生まれるのか楽しみ」と期待を込めた。


■活動開始へ準備段階 新庄

 昨年度からモデル事業を始めた新庄地域(新庄町、神島台、たきない町)は、取り組む事業と運営組織を具体的に準備する段階に入った。防災や移動支援、見守り活動などの事業案が出ており、運営についても「資金が必要な事業は法人格のある組織の設立が必要では」といった声が上がっている。

 2026年度までの4年間、モデル事業に取り組む。地域には9町内会、2小学校、1中学校、1公民館がある。住民組織「みんなの集い」を設置し、将来も住み続けたいまちづくりを検討してきた。

 7月に新庄公民館であった会合では、各団体の代表ら23人が話し合い、必要な事業として「運転代行」「移動販売」「悩み事のマッチングシステム」「防災につながるイベント」「独居老人の見守り」などが挙がった。

 運営する組織については「公民館の下に、事業ごとに実行委員会を設ける」「ボランティアでできることは既存の組織で、資金が必要なことは法人格を持った組織で対応する。どちらの場合も中間支援のNPOが必要」といった意見が出た。

 市自治振興課の想定では、本年度中に事業計画の策定や運営組織の規約作りを進め、来年度の活動開始を目指す。