和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

大辺路刈り開き隊を表彰 世界遺産追加登録に貢献

世界遺産に追加登録された和歌山県串本町の古道「富山平見」
世界遺産に追加登録された和歌山県串本町の古道「富山平見」
「関西・こころの賞」の賞状、盾と上野一夫さん
「関西・こころの賞」の賞状、盾と上野一夫さん
 熊野古道大辺路刈り開き隊が、関西・経営と心の会の「第32回関西・こころの賞」を受賞した。世界遺産追加登録につながった古道の修繕、清掃などの地道な活動が評価された。

 同隊は2004年に発足。隊員は和歌山県紀南地方を中心に三十数人おり、熊野古道大辺路ルート(田辺市―那智勝浦町)と古座街道(上富田町―串本町)で、危険箇所や荒れた道の修繕、迂回(うかい)路や道標の整備などの活動を続けている。

 熊野古道大辺路は、04年7月に「富田坂」「仏坂」「長井坂」が世界遺産に登録されたが、ルートの未確定や古道の未整備といった部分が多く、全ルートを通して歩くことができなかった。同隊は、古地図を見たり年長者に話を聞いたりしてルートを探し、やぶに覆われた古道を地元の人たちの協力も得ながら刈り開き、不法投棄されたごみの回収などを続けた。そのかいもあり、16年10月に串本町内の熊野古道「新田平見道」「富山平見道」「飛渡谷道」「清水峠」が世界遺産に追加登録された。

 関西の経済人でつくる「関西・経営と心の会」は、地道な活動を通じ社会に貢献している個人や団体を毎年表彰している。代表世話人は木村皓一・三起商行(ミキハウス)社長。表彰式はこのほど大阪市のホテルであり、上野一夫隊長(71)=串本町中湊=が出席した。

 賞状、盾などを受け取った上野隊長は「世界遺産に登録されていない古道も、世界遺産と変わらない道という考えで活動している。これまで草を刈って古道を見つけたり、土砂に埋もれた石畳を見つけたりした。台風の後の倒木撤去、掃除と活動に終わりはない。今でも古道を歩く人が道に迷うことがあるので、まだまだ看板も必要だと思う。隊員はみんな、古道は自分たちが守らないと守れない、という高い意識を持って活動している」と話す。

 今後の課題については「土砂で埋まってしまっている古道がまだあるので、迂回路を付けなければならない所があるし、まだ撤去できていない倒木もある。隊員の年齢がほとんど60歳以上なので、若い人にも入ってもらえるようにしていきたい」と話している。