和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月25日(月)

「創業融資」が増加 年代、性別問わず 日本公庫和歌山支店

酵素風呂の準備をする畠山美都希さん(和歌山県田辺市新屋敷町で)
酵素風呂の準備をする畠山美都希さん(和歌山県田辺市新屋敷町で)
独自開発した商品「イケジメくん」を手にした鶴岡道弘さん(和歌山県田辺市末広町で)
独自開発した商品「イケジメくん」を手にした鶴岡道弘さん(和歌山県田辺市末広町で)
 日本政策金融公庫(日本公庫)和歌山支店によると、県内の2023年度の創業向け融資は235件(前年度比3・1%増)で、3年連続の増加となった。融資額は10億6千万円。年代別では20代、50代の増加が大きく、女性の割合も増している。年代、性別を問わず「創業」が働き方の選択肢となってきている。

 畠山美都希さん(33)は、4月に田辺市新屋敷町で酵素風呂施設「都(つ)き」を開業した。酵素風呂が好きで友人らにも勧めていたが、近隣にないため「自分で作ってしまおう」と考えた。

 昨夏から計画し、今年1月に8年ほど勤めた団体を退職。本格的に準備を始めた。

 酵素風呂は米ぬかやヒノキのおがくずに体をうずめ、発酵熱で温める仕組み。電気やガスは使用しない。おがくずなどはもともと廃棄されるものを活用し、使用後も堆肥として再利用される。空き家の和室を改修し、特注の風呂を設置した。

 完全予約制で、週末は早くに予約が埋まる。40~80代の健康を気遣う女性が多く、夫婦での来店もあるという。

 畠山さんは「紀南初という独自性、強みを意識した。地元はもちろん、田辺に滞在する訪日客にも利用してもらいたい」と話している。

 鶴岡道弘さん(55)は昨年3月、田辺市末広町で釣り具メーカー「クレイン クラフト」を立ち上げた。長年勤めた会社を退職しての挑戦。自身で開発したオリジナル商品を販売する。

 広島県出身。高校卒業後、東京都で就職したが、釣り好きが高じ、25年ほど前に田辺市に移住した。

 商品開発の第1弾は、アジを簡単に締める道具「イケジメくん」。多く釣れると面倒になる作業が簡略化できる。仕組みはさまざまな魚種に応用可能で、特許も申請している。

 広告はSNSが中心。事前に1年半かけてインスタグラムのフォロワーを1万人以上に増やした。TikTok(ティックトック)の動画は再生回数が66万回を超えた。事務所は自宅で、経費も抑えている。

 鶴岡さんは「時間の自由度は会社員時代と全然違う。シニアでも夢があるなら挑戦するといい。ただし、勢いだけでは難しく、計画性は大事」と呼びかけた。

■小売、飲食・宿泊が増加

 創業の業種別では「小売業」が増加しているほか、コロナ禍で厳しい状況が続いていた「飲食店、宿泊業」も増加している。「医療・福祉」は3年連続の増加となった。

 日本公庫和歌山支店は「創業者の資金需要に着実に対応するとともに、各種情報提供で、事業を軌道に乗せる支援にも積極的に取り組みたい」と話している。