和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

守ろう海の生態系 和歌山・田辺の新庄漁協と海運会社

トヨフジ海運の社員に新庄の海について説明する新庄漁協の山西秀明さん(中央)=和歌山県田辺市新庄町で
トヨフジ海運の社員に新庄の海について説明する新庄漁協の山西秀明さん(中央)=和歌山県田辺市新庄町で
田辺湾で育つヒロメ
田辺湾で育つヒロメ
 和歌山県田辺市の新庄漁協が12日、トヨフジ海運(愛知県)と海の生態系保全・再生で協力する覚書を交わした。海藻が二酸化炭素(CO2)を吸収する「ブルーカーボン」創出に向けた藻場造成などに取り組む。トヨフジ海運は活動資金の寄付もした。


 新庄漁協は新庄周辺海域の「自然共生サイト」認定を目指している。民間の取り組みで生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する制度。自然環境の調査と保全、エコツアーの開発などに取り組んでいる。ブルーカーボンもその一環。

 ブルーカーボンは気候変動対策だけでなく、漁業資源の増大や水質浄化につながるなど利点が多い。全国的に注目度が高まっており、トヨフジ海運も取り組みを検討する中、専門家の紹介で新庄漁協の活動を知った。

 トヨフジ海運の鈴木省三常務は「グループ会社で地球環境保全に取り組む中、海運会社として海に貢献したいと考えていた。新庄漁協はさまざまな活動をしており、学ぶことは多い。田辺沖は会社の船も航行しており、ここから最初の一歩を踏み出したい」と意気込みを語った。

 新庄漁協の橘智史組合長は「世界的に広がっている磯焼けは新庄も同じ。かつての海を取り戻すため、協力はありがたい」と感謝。「これから、いろいろな団体や市民と一緒に活動を広げたい」と話した。

 この日は、漁協で生態系保全の活動を担当する山西秀明さんがトヨフジ海運の社員を案内して、新庄沖でヒロメの「種まき」をした。成熟した海藻を袋に詰めたスポアバッグを投入し、胞子を周辺に飛散させ藻場の造成を図った。

 漁協はヒロメだけでなく、アマモの藻場造成にも取り組む。こうした生態系保全活動は市民にも広く参加を呼びかける方針で、トヨフジ海運の社員らも参加を予定している。