和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月26日(木)

89歳母の願い、娘が実現 家族や風景描いた油彩画展「生きている間に」、和歌山・田辺

会場に並ぶ安井淑子さんの油彩画と安井淳子さん(左)=和歌山県田辺市東陽で
会場に並ぶ安井淑子さんの油彩画と安井淳子さん(左)=和歌山県田辺市東陽で
 「個展をしたい」と言っていた母の思いをかなえたい―和歌山県田辺市朝日ケ丘の安井淳子さん(64)は、同市東陽の市文化交流センターたなべるで、母の淑子さん(89)の油彩画作品17点を展示している。27日まで。

 淑子さんが油彩を本格的に始めたのは60代なかばで、約10年間の創作活動の中で県展入選や御坊市展知事賞、新構造展二席、田辺市展市長賞などを受賞した。かねて「個展をしたい」と言っていたが、病気になって創作ができなくなった。現在はみなべ町埴田の高齢者施設に入居している。

 淳子さんら家族が「生きている間に個展を開かせてあげたい」と、本人に代わって初めて開いた。会場には、家族などをモデルにした人物画13点と船着き場などの風景画4点を展示している。

 淳子さんは「本当は本人に個展を開いてもらいたかったし、もし元気な時に見ることができていたら、とても喜んだだろう。図書館に来たついでに、見ていってください」と話している。

■描き続けた少女の絵 モデルは本紙記者

 同じモデルの少女を描いた作品6点が並んでいる。孫である私を描いた作品である。祖母の創作期間は、私の少女時代と重なる。私はモデルとなるのを恥ずかしがりつつも、作品が仕上がるのを楽しみにしていた。

 祖母は家では模写やデッサンをして、さまざまな年齢の人間の骨格や筋肉の付き方、血の通った肌の色の出し方を研究。キャンバスに向かい、熱心に筆を走らせていた。

 大人になったいま作品を見ると、私の少女時代の姿を切り取って描いてくれたのはありがたく、祖母の目に私はこのように写っていたのかとしみじみ思う。(紀伊民報記者)