和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

安宅氏城館群、国史跡へ 白浜、文化審が答申

国の史跡に指定される安宅氏の城館群。赤枠は今回指定の範囲、黄枠が今後指定を目指す範囲(右側が和歌山県すさみ町方面)=白浜町教委提供
国の史跡に指定される安宅氏の城館群。赤枠は今回指定の範囲、黄枠が今後指定を目指す範囲(右側が和歌山県すさみ町方面)=白浜町教委提供
 国の文化審議会は15日、和歌山県白浜町の安宅氏城館群を国史跡に指定するよう、文部科学大臣に答申した。中世の熊野水軍の一翼を担った安宅氏の活動や領域支配の実態が分かる点などを貴重と評価した。指定に向けて調査を続けてきた町教委や、地域の宝を守り、生かそうと活動する地元住民は答申を喜んでいる。

 国の史跡に指定されるのは、日置川流域を中心とした8カ所からなる城館群のうち、安宅氏居館跡(安宅)、八幡山城跡(安宅、矢田)、中山城跡(田野井)、土井城跡(同)、要害山城跡(富田)の5カ所。鎌倉末期~戦国期に安宅氏が築いたもので、居館跡を中心に、戦略的に築かれたことがうかがえる点を審議会は評価した。

 城館群の調査は2002年、旧日置川町が町史を作るために始め、測量や発掘などを続けてきた。この中で、小型火縄銃の鉄砲玉3点(いずれも鉛製、直径1・2センチ)が見つかった。中世のものとしては紀南では初めての出土だったという。

 10年以上、調査に携わってきた白浜町教委の佐藤純一学芸員(36)は「地道な調査の成果が認められる形になり、とてもうれしい」と話す。町では20年度以降、専門家の協力も得て調査を続け、城館群の保存活用計画の策定を進める。

 地域の遺産や自然を守り、生かそうと活動する有志団体「ひきがわ歴史クラブ」会長の尾崎彰宏さん(72)=白浜町日置=も「長年の念願がかなってよかった」と話す。17年7月に団体を設立したのは、安宅氏城館群の国史跡指定を目指し、住民側から盛り上げていく狙いもあった。

 会員数は発足当初より増えて約60人になったといい「今回の答申から外れた3カ所の追加登録に向け、今後も町教委と連携してできることをやっていきたい」と語った。3カ所は大野城跡(大古)、勝山城跡(塩野、安宅)、大向出城跡(日置)。

 白浜町内の国史跡は、熊野古道大辺路(富田坂、仏坂)に次いで2例目になる。県内では、安宅氏城館群を合わせると28件になる(特別史跡の1件を含む)。



 国の文化審議会は15日、御坊市湯川町にある橋本太次兵衛家住宅の3件についても、国の登録有形文化財(建造物)に登録するよう文科相に答申した。3件は、明治~大正に建築された新座敷、旧米穀集荷事務所、土塀。

 県教委によると、同種の登録は今回を合わせると92カ所(266件)になる。