和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月25日(水)

全面的に工事やり直し 施工不良の八郎山トンネル、供用は2年遅れに、和歌山

12日から始まっている八郎山トンネルの覆工コンクリート取り壊し(和歌山県提供)
12日から始まっている八郎山トンネルの覆工コンクリート取り壊し(和歌山県提供)
 大規模な不良工事が発覚した和歌山県内を通る県道長井古座線の八郎山トンネル(串本町―那智勝浦町、711メートル)で、県は20日、掘削以外、ほぼ全ての工程をやり直す方針を決定した。全面的に再施工するケースは国内でも異例とみられ、県の福本仁志・県土整備部長は「最悪のケースになった」と話した。供用開始は当初、12月の予定だったが、2年ほど遅れる見込み。


 トンネルは県から請け負った淺川組(和歌山市)と堀組(田辺市)の共同企業体が施工。別業者からの指摘で県が調べ、覆工コンクリート(内壁)のほとんどに空洞や薄い場所があることが発覚した。業者が県にデータを偽装して報告していたことも判明した。県が設置した専門家による「技術検討委員会」で対策を協議している。

 第3回会議が20日、和歌山市であり、アーチ型の鋼材「鋼アーチ支保工」約700本のほとんどで、設置位置がずれていることが、視認調査や非破壊検査を基にした分析で推定されると県から報告があった。検討委はこれまでに、全ての内壁を剝がす方針を決めていたが今回、内壁だけでなく、支保工を含め、ほぼ全面的にやり直す必要があると判断した。支保工については山の圧力からトンネルを支える部材であり、安全確保のため、1本ずつ慎重に取り外し、新しいものに付け替えるという。

 会議後に記者会見した、委員長の大西有三・京都大学名誉教授は、業者が工事途中に施工不良を認識したのに継続したとして「普通の技術屋としては倫理観が欠如しているのではないか」と指摘。県の福本部長は「全延長、掘削以外やり直しというのは、(国内でも)あまり例はないと思う」と述べた上で、不良施工の原因について「人為的な要素が大きい。追加で業者に細かなヒアリングをしていきたい」とした。

 対策工事は請負業者が、自社負担で実施する。県は、正しい工事が実施されるよう、段階ごとの状況を技術検討委員会に報告し、場合によっては委員会による現場確認も検討するという。内壁の撤去工事は12日から始まっている。