和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

業者「厚さ不足隠すため」 八郎山トンネル不良工事、68回中3回しか県に検査要請せず 和歌山

内壁の厚さ不足が発覚した県道長井古座線の八郎山トンネル(和歌山県串本町で)=県提供
内壁の厚さ不足が発覚した県道長井古座線の八郎山トンネル(和歌山県串本町で)=県提供
 覆工コンクリート(内壁)の厚さ不足が発覚した和歌山県道長井古座線の八郎山トンネル(711メートル、串本町―那智勝浦町)の工事中に行った県の検査で、業者からの要請が本来は68回必要なところ、3回しかなかったことについて施工業者は「厚さ不足を隠すためだった」と話していたことが分かった。

 このトンネル工事は県が淺川組(和歌山市)と堀組(田辺市)の共同企業体に発注し、昨年9月に完成。しかし、その後、別業者の指摘を受けて県が調査したところ、内壁のほとんどに空洞や薄い場所があることや、業者が書類を改ざんしていたことが発覚。供用開始予定を今年12月から延期し、専門家による「技術検討委員会」で今後の対策工事を検討している。

 県は工事の進行状況に応じ、業者の要請に基づいて「段階確認」を実施する。覆工コンクリート工事の検査は68回必要だったが、業者からの要請が少なく3回しか実施しなかった。工事全体にすると必要な136回中6回しかしていなかった。このことについて秋月史成議員(自民、西牟婁郡)が8日の県議会一般質問で県に認識や対応を聞いた。

 県の福本仁志県土整備部長は「覆工コンクリート厚が不足していることを隠すためだったと業者への聞き取りで確認している」と述べた。

 さらに「県としても段階確認の要請が少ないことに気付かなかった。段階確認が適切に行われていれば、このような事態に至らなかったと考え、県としての責任を重く受け止めている」とし、現在施工中の他のトンネル業者や建設部全体に対し、段階確認の適切な実施徹底を求めるなど、再発防止策を検討しているとした。

 また、岸本周平知事は「県民の信頼を損ね、多大なるご迷惑をお掛けしたことをおわび申し上げる」と陳謝。「和歌山県を代表する会社によって起こされた事案であり、大変遺憾である。社会的影響が非常に大きく、いまだに信じられない」と話し、再発防止や早期供用開始に向け「全力で頑張りたい」とした。