和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

和歌山市で「移民と美術展」

上山鳥城男「疎開者」(1942年、全米日系人博物館蔵 Gift of Kayoko Tsukada, 92.20.3)
上山鳥城男「疎開者」(1942年、全米日系人博物館蔵 Gift of Kayoko Tsukada, 92.20.3)
上山鳥城男「黒衣の肖像(上山夫人)」(1928年、個人蔵)
上山鳥城男「黒衣の肖像(上山夫人)」(1928年、個人蔵)
 和歌山市吹上1丁目の県立近代美術館は、トランスボーダー「和歌山とアメリカをめぐる移民と美術」展を開いている。世界の和歌山県人が故郷に集う「第2回和歌山県人会世界大会」が10月に開催されたのに合わせ、同館はこれまで培ってきた戦前の渡米美術家研究をさらに広げ、和歌山の移民の歴史と重ねて紹介する。11月30日まで。

 和歌山は、海外への移民が全国第6位に上る「移民県」として知られる。明治時代から新天地での仕事を求めて太平洋を渡った人々の子孫は、今も各地で暮らしている。

 今回の展覧会の中心となるのは、アメリカ西海岸で美術を志した人々の活動。特にカリフォルニアでは、移民という立場で海を渡った人たちが多く暮らし、活発な芸術活動が生まれた。中でも、現在の有田川町出身の画家、上山鳥城男(1889~1954)を和歌山ゆかりの作家として新たに紹介し、その周囲の多様な芸術の営みを初公開の作品や資料とともに展示する。

 西海岸は、日米開戦に伴って日系人が強制収容された歴史をも背負っている。鉄条網に囲まれた収容生活の中でも、人々はさまざまに創造的な活動をし、よりどころとしていた。今回の展覧会では、全米日系人博物館や諸機関と連携しながら、移民と美術についての歴史を双方向から見直し、発信する。

 出品作品は、上山鳥城男「黒衣の肖像(上山夫人)」(1928年、個人蔵)、同じく上山鳥城男「疎開者」(42年、全米日系人博物館蔵)、竹久夢二「花衣」(31~32年、同)、ヘンリー杉本「カーメルハイランド海辺」(37年、県立近代美術館蔵)など。

 開館時間は午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館(10月9日は開館し、翌10日休館)。観覧料は一般800円、大学生500円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料。11月18、19日は「関西文化の日」で無料。