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2024年11月05日(火)

県道のトンネルでずさん工事 和歌山県串本-那智勝浦間、業者を半年の入札停止処分

ずさんな工事がされていた県道長井古座線の八郎山トンネル(和歌山県那智勝浦町で)=県提供
ずさんな工事がされていた県道長井古座線の八郎山トンネル(和歌山県那智勝浦町で)=県提供
「八郎山トンネル」図
「八郎山トンネル」図
「八郎山トンネル」地図
「八郎山トンネル」地図
 12月開通予定だった県道長井古座線「八郎山トンネル」(和歌山県串本町上田原―那智勝浦町中里、711メートル)で、ずさんな工事が発覚した。全体的に壁や天井部のコンクリートが薄かったり空洞があったりし、地震によっては最悪崩落の恐れもあったという。工事書類も改ざんされていたといい、県は26日付で請負業者の淺川組(和歌山市)と堀組(田辺市)を6カ月の入札資格停止処分とした。

 串本町と那智勝浦町を結ぶ県道長井古座線のバイパス道にあるトンネル。2社の共同企業体(JV)が県から約20億4千万円で請け負い、2020年9月に着工、22年9月に完成し、県に引き渡された。

 トンネルは「吹付コンクリート」の内側に「覆工コンクリート」を施工する。県が別に発注した業者が照明灯を設置しようとし、天井部の「覆工コンクリート」に穴を開けたところ「吹付コンクリート」との間が空洞になっているのが分かった。その後の調査で、工事の初期は正常だったが、それ以外の少なくとも50カ所以上に空洞があった。また、厚さは30センチ必要だったが全体の7~8割で薄く、3センチしかない所もあったという。県への完成書類は基準を満たした数値になっていた。

 放置した場合、最悪地震で崩落したり、経年劣化で天井や壁のコンクリートが剝がれ落ちやすくなる恐れがあったという。

 県の業者への聞き取りによると、現場ではコンクリート不足を認識しながらも対策を取らず、施工を進めていたことが分かった。ただ、当初から意図的だったかどうかは分からないという。県は工事の段階ごとに業者からの連絡を受けて現場確認することになっているが、覆工コンクリートでは68回必要なところ、正常に施工されていた初期の3回しか実施されなかった。

 近く、専門家を含めた「技術検討委員会」を設置し、詳しい原因を究明した上で工法を決定し、業者の費用負担で補修工事を実施する。開通時期は未定。淺川組が実施した県内の他のトンネルは定期検査で問題はなかったが、改めて調査する可能性があるという。

■信頼関係にひび

 27日、記者会見した県の福本仁志・県土整備部長は「全国的にもこれほどの規模の施工不良は聞いたことがない。建設業者との信頼関係にひびが入る。非常に残念だ」とした。段階確認を3回しかしなかったことについては「業者から依頼があるべきだが、県としても責任がある」とし「供用が大幅に遅れ、県民に深くおわび申し上げたい」と謝罪した。