和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

ウミガメの上陸や産卵状況報告 みなべで情報交換会

みなべ町の状況を説明する、みなべウミガメ研究班の前田一樹さん(右)=和歌山県みなべ町谷口で
みなべ町の状況を説明する、みなべウミガメ研究班の前田一樹さん(右)=和歌山県みなべ町谷口で
 「紀伊半島ウミガメ情報交換会」(湊久和代表)はこのほど、和歌山県みなべ町谷口の町生涯学習センターで会合を開き、県内と三重県でウミガメの保護や調査活動をしている団体が、昨年の上陸や産卵の状況を報告した。

 同会には、ウミガメの保護・調査や研究を続ける「NPO日本ウミガメ協議会」(大阪府)も含め11団体が加盟しており、毎年、情報交換のための会合を開いているが、コロナ禍により3年ぶりの開催。今回は8団体の13人が出席し、順番に報告した。

 全国有数の産卵地「千里の浜」があるみなべ町からは、「みなべウミガメ研究班」の事務局を務める町教育委員会の前田一樹さんが出席。昨年の上陸数は105回、産卵数は49回で、前年より微増したことを報告し、過去の調査を振り返り「調査は1981年から始まった。産卵数は10年後にピークを迎え、10年たつと底、さらに10年後にピーク、その10年後が今で、これから10年後に山が来ると期待している」と語った。新しい取り組みとして、数年前の台風で岩盤がむき出しになるほど浜の砂が流出したため、アシを何本も立てて砂がたまるよう対策を施していることを紹介し「3カ月たったが、今のところ効果は確認できていない。今後に期待したい」と述べた。遮光ネットの設置や出前講座、観察会など他の活動についても報告した。

 すさみ町にあるエビとカニの水族館の平井厚志さんは、同町の里野や江住の海岸、すさみ海水浴場では昨年、上陸は確認できず、白浜町日置の志原海岸では上陸が2回確認できたが、いずれも産卵しなかったことを報告した。

 白浜町の田名瀬英朋さんは昨年、旧白浜町地域の海岸で6回の上陸が確認できたが、産卵はなかったことを報告し「急速ではないが、徐々に減っている」と語った。死んだ状態で漂着した個体については、18件確認でき、全てアオウミガメだったことを報告し「事故か自然現象か分からないが、寒さで死んだ可能性はある。あまり大きい個体ではない」と説明した。

 新宮市海ガメを保護する会によると、同市の王子ケ浜では上陸が4回で全て産卵が確認できた。那智勝浦町の玉の浦リップルズクラブによると、同町の下里大浜では上陸は確認できなかった。三重県の七里御浜で調査する紀宝町ウミガメ公園によると、同町で上陸が2回確認されたが、産卵はなく、御浜町では上陸17回で産卵が6回確認できたという。

 三重県北部14カ所の海岸で調査する三重大学のサークル「かめっぷり」のメンバーも報告。上陸は2007年以来、15年ぶりに確認できず、その一方で、死んだ状態での漂着は16件確認でき、前年より増えたという。「死因は分からないが、産卵の数が多かった時より、少ない時の方が漂着が多い」と述べた。

 日本ウミガメ協議会の松沢慶将会長は全国の状況を説明した。アカウミガメ、アオウミガメのいずれも昨年の上陸、産卵ともに前年の2倍近くまで増えている。アカウミガメは近年では2019年が最も少ないが、それ以来回復傾向にあるという。