和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月24日(日)

地域課題を協力して解決 田辺の事業家と大手企業若手

オンラインで企画案の発表に聞き入る真砂充敏市長(手前)=和歌山県の田辺市役所で
オンラインで企画案の発表に聞き入る真砂充敏市長(手前)=和歌山県の田辺市役所で
 和歌山県田辺市の事業家と大手企業の若手が協力し、ビジネスの手法で企業や地域が抱える課題の解決に取り組む4カ月間のプロジェクトが終了した。地方と都市部が互いの個性を引き出し、実践的な企画が生まれた。


 日本能率協会マネジメントセンター(東京都)が次世代リーダーを育成する研修「ことこらぼ」に田辺市が協力。業種や職種もさまざまな7社11人が、市の人材育成事業「たなべ未来創造塾」修了生3人とチームを組み、5月から協議を重ねてきた。27日に成果発表会がオンラインであった。

 葬儀業「中田」(上の山1丁目)中田真寛さん(48)のチームは、海洋散骨や樹木葬など自然葬の顧客拡大を図る案。調査では出身地や居住地で眠ることにこだわらない人が多かった。墓も「要らない」が多数を占めており、県外からも呼び込めると考えた。

 熊野はよみがえりの地として認知度が高い。「魂は木々に宿る」とも言われ、亡くなった人に近づける場所といったPRもできる。自然葬に関心のある人、熊野ファンに向けて魅力を発信し、関係人口増加にもつなげたいという。

 中田さんは「チームの皆さんは、仕事のスピード感が違う。本業をしながら、1年はかかりそうな計画を2週間ほどでまとめた。期待以上の成果があった」と話した。

 林業ベンチャー「ソマノベース」(文里2丁目)奥川季花さん(26)のチームは、集めたドングリを個人や企業に苗木に育ててもらい植林する事業を手がけているが、人手不足が課題だった。企画案は地域や観光客の力を借りて、ドングリを集めるとともに、新たなつながりを生むのが狙い。すでに地域で協力の輪が広がっているという。

 「田辺自動車学校」(新庄町)野村晃大さん(44)のチームは、観光や地元ならではの体験ができる免許合宿の開発。人口が減少する中、全国から合宿参加者を募る。さらに新事業を通じスタッフの企画力を高めることで、企業が生き残る力を付けたいという。

 発表を見守った真砂充敏市長は「大手企業の若手は着眼点が鋭く、分析能力も高い。地元事業者にプラスなのはもちろん、企業側も経験値アップにつながっていると聞いている。今後もこの関係性を続けてほしい」と講評した。