和歌山県田辺市龍神村広井原、国道３７１号沿いのドライブインが営業していた場所で２３日、新しいドライブイン「龍の故郷（ふるさと）」が開業する。オーナーの建設業、山本進さん（７０）と妻の久美子さん（５９）が、地元のスタッフ９人と共に全て「手作り」で内装を一新。久美子さんは「みんなが気軽に来てもらえるような憩いの場所にしたい」と話している。


　久美子さんによると、以前は夫婦で京都市に住んでいたが、もともと自然豊かな場所が好きで龍神村にもよく足を運んでいた。龍神村に住みたいという思いが強く、３年ほど前から白浜町と京都市の２拠点生活をしながら移住先を探していたところ、閉店したドライブインが売りに出されているのを見つけ、昨年夏に購入した。

　改装作業は、開業後にドライブインで働くスタッフ９人と共に今年７月から始めた。床を磨いてワックスをかけたり、店にあった机や椅子をきれいにしたり、建物の空調を改修したり―。久美子さんは「最初はどこから手を付けていいか分からないような状態だった。大変だったけど、みんなのおかげでここまで来られた」と振り返る。

　改装には、自然乾燥させた龍神村産の木材や紀州材を使用。家族連れでも気軽に来られるようにと、建物の一角には龍神産のヒノキを使ったキッズコーナーと授乳室を新しく設けた。座敷席もつくり、特注した焼き杉のいろりテーブルを設置。建物の裏手を流れる日高川を眺めながら食事ができる場所も用意する予定という。

　龍神村ならではの季節の食材を楽しめる日替わり弁当や、卓上の七輪を使ったアユの塩焼き、オリジナルブレンドの豆を使ったドリップコーヒーなどのメニューを用意。地域の住民が簡単な買い物ができるように、日用雑貨や食料品を販売、土産物や地域の農産物、地元の福祉作業所で作った製品も販売する。

　耐火れんがで作ったピザ釜を使い、ゆくゆくは手作りピザを焼く体験もできるようにする予定。道路を挟んで向かいの建物に、ツーリング客がバイクを止めて休憩できる場所を設けることも計画している。週末や祝日には、地域の住民が野菜や手作りのジャムなどを販売するマルシェの開催も企画しているという。

　進さんは「業者に任せたらすぐに終わる作業だけど、自分たちで作り上げたものだからこそ、愛着も湧いてくると思う。時間がかかっても、スタッフみんなで協力して、全て手作りでやりたかった。地域の人に喜んでもらえる、居心地の良い場所にしていきたい」と話している。

　２３日午前１０時～午後４時にはオープニングイベントを開催する。「なかへち清姫太鼓」による和太鼓の演奏があるほか、おにぎりや茶がゆ、焼きそば、５０食限定の焼き肉弁当などを販売。龍神村のクリエイターによるワークショップや展示販売もある。５００円以上の購入で挑戦できるガラガラ抽選会も予定している。コロナ禍のため、餅まきの代わりに「お餅配り」と「菓子配り」をすることも検討している。