和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

中辺路町でも飼育始まる 和歌山県の地鶏「龍神コッコ」

「かごしげ農園」で飼育されている龍神コッコ(和歌山県田辺市中辺路町北郡で)
「かごしげ農園」で飼育されている龍神コッコ(和歌山県田辺市中辺路町北郡で)
 和歌山県田辺市龍神村の新たな特産として注目されている県産地鶏「龍神コッコ」の飼育は、これまで村内の1業者のみがしていたが、新しく同市中辺路町の「かごしげ農園」が約100羽の飼育を始めた。龍神コッコのブランド化とPRに取り組む龍神コッコ普及協議会の石﨑源太郎会長(48)は「龍神コッコは昨年、本格的な飼育が始まったばかり。着実に進んでいる実感が得られてうれしい」と話している。


 龍神コッコは、県畜産試験場養鶏研究所(日高川町)が開発した新たな採卵用の地鶏。龍神村で長年飼育されてきた日本鶏の龍神地鶏と、在来鶏のロードアイランドレッドを掛け合わせている。卵は、普通の鶏卵と比べてやや小さいが、うま味成分の含有量が多いのが特徴。これまでは龍神村柳瀬の養鶏場「とりとんファーム」でのみ飼育されていた。

 「かごしげ農園」は、精肉小売販売業や飲食店経営を手がける「カゴシゲフーズ」(田辺市宝来町)が運営している。社長の籠重誠二さん(51)によると、人手不足で一定規模の養鶏場が消えていく中、紀南ブランドの鶏を育てて地域の産業を守るため、昨秋から本格的に養鶏事業に参入した。

 中辺路町北郡に設けた鶏舎では、鶏ができるだけ元気に過ごせるよう、平飼いで地面を自由に動き回れる環境で飼育している。鶏舎は十分に光が入るよう設計し、風通しや寒暖対策も施している。現在約2500羽を飼育し、鶏卵や鶏肉を販売している。

 安全・安心な食を届けるため、農園では米ぬかやおからなどを発酵させた「ボカシ」を使用。鶏に与えることで腸内環境を整え、鶏の健康を保っている。また、鶏舎の床にはおがくずを敷き詰めており、鶏ふんや「ボカシ」が混ざることでさらに発酵が進み、良質で臭いのない有機肥料が出来上がる。有機肥料は近隣の農家に販売している。

 龍神コッコは、6月末に養鶏研究所から約100羽を運び入れた。いずれも生後90日ほどの雌で、採卵ができるのは1カ月半くらい先になる見込みという。籠重さんは「できたら、自社で卵の二次加工もしていきたい。和歌山の地鶏の卵を、ぜひ地元の人にも食べてほしい」と話している。

 龍神コッコ約100羽を飼育している「とりとんファーム」では、龍神村内の道の駅や大阪市の阪神百貨店などで卵を販売している。また、龍神村甲斐ノ川の洋菓子店「菓子工房HOCCO(ホッコ)」ではプリンにも使用している。

 「とりとんファーム」を営む石﨑会長は「龍神コッコを扱う業者が増え、組織的な取り組みができるようになれば、卵の販売だけでなく鶏肉の販売など多様な取り組みも可能になる」と期待している。