和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月20日(金)

地域づくり事業さらに推進 田辺市上秋津に新たな協議会

国の推進事業を受けて、新たな地域づくり事業に取り組む田辺市上秋津地域
国の推進事業を受けて、新たな地域づくり事業に取り組む田辺市上秋津地域
 和歌山県の田辺市上秋津地域は、本年度から農林水産省の推進事業を受け、地域づくりに関わる複数の団体で構成する協議会を立ち上げ、「農地保全」「地域資源の活用」「生活支援」の3分野の事業に取り組む。具体的には、耕作放棄地の再生やかんきつ類商品の販路拡大など既存事業を発展させ、水力発電事業やコミュニティーバスの運行など新規事業の計画作りをする。


 中山間地域では高齢化や人口減少が進み、集落単体では農地保全や農業生産、集落機能の維持が難しくなる。そのため、農林水産省は「農村型地域運営組織(農村RMO)形成推進事業」として、広域的な範囲で支え合う組織づくりを支援する。

 上秋津地域はこれまでも、地域の各種団体で構成し、住民の合意形成を図りながら地域づくりを進める「秋津野塾」を立ち上げ、農産物直売所「きてら」や、都市と農村の交流施設「秋津野ガルテン」の開設、再生可能エネルギーやスマート農業の導入に取り組むなど、全国に先駆けた地域づくりを進めてきた。今回の事業で、それらの取り組みをさらに発展させたいと考えている。

 このほど、事業を実施する「秋津野地域づくり協議会」を設立した。「農業法人・秋津野」「農業法人・きてら」「農業法人・秋津野ゆい」「一般社団法人・ふるさと未来への挑戦」「秋津野塾」の五つの団体で構成し、事業期間は3年間。総事業費は930万円で、そのうち780万円は国の補助金。

 農地保全では、耕作放棄地を梅畑として再生する事業に取り組む。まず地域内で50アールの耕作放棄地を再生するほか、再生が難しい30アールの耕作放棄地は里山として活用できるようにする。

 地域資源の活用では、加工用機械を導入し、かんきつ類のダイダイの皮をスイーツなどの材料に使えるピールに加工、販売するほか、すでに製品化しているポンカンや三宝柑の精油入りのシャンプー、リンス、ハンドクリームの販路開拓を図る。また、地域内に整備した小水力発電施設を中心とした地域巡りのツアーのプログラム、旅行商品の開発にも取り組む。

 生活支援では、地産地消の再生エネルギー拡大を図るため、奇絶峡川中口発電所跡を活用した水力発電事業の実現に向けた計画作りと、その売電収入を活用したコミュニティーバス運行の計画作りを進める。

 秋津野地域づくり協議会の会長を務める農業法人秋津野の木村則夫社長は「これらの事業は、これまで歩んできた地域づくりの検証にもなる。コロナ禍の影響で地域活動が弱まりがちで、今後ますます高齢化も進む中、これまで以上に緊密に連携し、あらためて地域みんなで課題を考え、取り組んでいく機会にしたい」と話している。