和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月30日(月)

県立医大に「産科枠」 医師不足解消へ和歌山県、全国初

 和歌山県内で産科医が不足し、分娩(ぶんべん)を休止する病院が相次いだことから、県は17日、2023年度から県立医科大学(和歌山市)医学部の入学者枠「県民医療枠」内に「産科枠」(3人程度)を新設すると発表した。卒業後に9年間、県内で勤務や研修をしてもらう。産科に限定した入学者枠を設けるのは全国の大学で初めてという。


 県立医大医学部の定員は100人で、このうち「県民医療枠」は20人程度。県民医療枠は、県内の医師確保のために08年度に設置した入学者枠で、在学中に修学資金を支給。卒業後、同大学の付属病院や県内の地域中核病院で9年間、研修や勤務することを条件に、返還が免除される。

 これまでは診療科の限定はなかったが、来年度からは県民医療枠のうち3人程度を「産科枠」に設定。加えて、県内で特に不足する3科(産科、小児科、精神科)から選択できる「不足診療科枠」(2人程度)も設ける。募集要項は7月に発表する。

 県の医師確保計画によると、23年度には産科医115人を確保する目標を立てているが、20年12月現在で99人。また、今年3月に県立医大付属病院での初期診療研修を修了した人のうち、産科医を選択した医師はいなかった。

 産科医は拘束時間が長いほか、訴訟リスクも高いとされ、全国的に志望者が少ないという。

 県内でも近年、産科医不足により、分娩を休止する病院が出ている。県によると、有田市立病院は20年1月から今年2月まで分娩を休止。新宮市立医療センターも3月から分娩を休止していたが、医師が確保できたため、6月に予約を再開する予定となっている。

 また、高度な周産期医療ができる「地域周産期母子医療センター」の紀南病院(田辺市新庄町)は、診療体制が整わないとして「里帰り分娩」を20年4月から一時休止していたが、今夏に再開する。

 県は産科医不足の解消に向け、県外からの医師確保に取り組んできたほか、4月には産科医の養成強化のため、県立医大に「総合周産期医療支援講座」を新設。さらに、今回、特別枠の設置を決めた。

 仁坂吉伸知事は17日の定例記者会見で「抜本的に対策を打っておかないとまずい。時間はかかるが、若い人を養成していきたい」と説明。国に対しても「全国で産科医が不足している。国も恒久的な対策を考えていかないといけない。全国で養成できるよう、国に強く要望していきたい」と述べた。