和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月26日(木)

和歌山のIR誘致計画頓挫 県議会が国への申請案否決

IR議案の投票結果を確認する職員(20日、和歌山県議会議場で)
IR議案の投票結果を確認する職員(20日、和歌山県議会議場で)
 和歌山県議会は20日、和歌山市の「和歌山マリーナシティ」への「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」誘致に関する議案を僅差で否決した。資金計画の透明性や確実性が問題視され、最大会派の自民党県議団(議長を除き26人)で、賛否が割れたことが影響した。これにより県は、28日が期限となっている国への申請ができなくなった。IR誘致計画は頓挫した。

 議案は、県とIR業者が作成した「区域整備計画」を国に提出し、開業認定の申請をしてもよいか問う内容。

 本会議では、無記名投票による採決があり、森礼子議長(自民)を除く議員40人が順番に投票。その結果、賛成18票、反対22票で否決された。IR誘致自体に反対してきた共産党県議団(4人)だけでなく、自民党県議団の約半数も反対に回ったとみられる。IRには賛成だが、初期投資額約4700億円を調達する資金計画の確実性などを疑問視する声があった。

 自民の玄素彰人議員は閉会後「反対した。IRは成長の起爆剤であることは間違いないので賛成だが(今回については)資金計画が不透明」と述べた。「もう一度いい形で(誘致計画を)引っ張ってこられる努力はしたい」とした。

 一方、賛成票を投じた自民の玉木久登議員は「少子高齢化に対抗できる手段として、IRは非常に有効であり、疑問に思っていたことも全て、私の中で明らかになったので賛同した。結果はどうあれ、県ではなく国の判断を仰げたら良かったという気持ちでいっぱいだが、(結果は)慎重に受け止めたい」と話した。

 森議長は「IR特別委で深く協議された結果が、今日の(賛否の)数字に表れたのではないか。(否決の要因は)計画の中で、不透明な所が明らかにされなかったこと、コロナ禍で情勢が不安定だったことが挙げられるのではないか」と話した。

 計画ではIRを「和歌山マリーナシティ」の23・61ヘクタールに設置。カジノ施設のほか、国際会議場や展示場、宿泊施設なども設け、2030年度には約1300万人の来場者数を目標とした。初期投資額は約4700億円、経済波及効果は建設時約7100億円、運営時約3500億円と見込んでいた。

■「責任の取りようがない」 仁坂知事

 否決後の取材に対し、仁坂吉伸知事は「否決されたのは痛恨の極み。和歌山の衰退を止めるための最大の起爆剤にしようと頑張ってきたが、これからどうしようかと思っている」と述べた。

 否決に至った一因に挙げられている資金計画の確実性や透明性の問題について「最終的には仕上がりはすごくいいんではないかと思った。しかし、議員の判断は違ったということ」と話した。

 今回の結果に至った責任については「国の審査を勝ち取り、プロジェクトを成功に持っていく責任は私にあると言っていた。ところが、残念なことに責任の取りようがなくなった。すなわち、責任を持ってやるぞと言っても、やらせてくれなくなった。困ったことだ」といい「この結果でいいんだということの説明責任は反対した人にもあると思う」とも述べた。

■「結果尊重したい」

 県議会の動きは紀南の首長も注視していた。

 田辺市の真砂充敏市長は「慎重な審議を通じて『否決』の判断を下した県議会の結果を尊重したい」、白浜町の井澗誠町長は「IRは地域振興につながる有効な手段の一つだが、コロナ禍で計画が適切かなど、県民に十分な説明が果たされたかが問われた。現時点では、残念ながら県民の理解と賛同が得られる状況になかったのではないか」と述べた。