和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

”店舗のない”菓子店 SNSで人気広がる

JR朝来駅構内のイベントで菓子を販売するケ・セラ・セラの芝﨑聖奈さん(左)=和歌山県上富田町朝来で
JR朝来駅構内のイベントで菓子を販売するケ・セラ・セラの芝﨑聖奈さん(左)=和歌山県上富田町朝来で
食材にこだわって作るhaluhi.のチーズケーキ(和歌山県田辺市秋津町で)
食材にこだわって作るhaluhi.のチーズケーキ(和歌山県田辺市秋津町で)
工房で予約分のケーキを製造する鈴木千夏さん(和歌山県田辺市文里2丁目で)
工房で予約分のケーキを製造する鈴木千夏さん(和歌山県田辺市文里2丁目で)
 店舗を持たない菓子店が増えている。商品は写真共有アプリ「インスタグラム」を通じてPR。地域のさまざまなイベントに出店し、固定客が付く人気「店」も出てきている。


 和歌山県田辺市内のキッチンカーでアルバイトをしている芝﨑聖奈さん(30)は、自身の好きな言葉「ケ・セラ・セラ(なるようになる)」を店名に、イベントでマフィンなどの焼き菓子を販売している。出店時は100~200個の焼き菓子を1人で作り、包装まで手掛ける。

 芝﨑さんは「子どもがまだ小さいから店を持つのは難しい。それに『しなくちゃいけない』という気持ちに追われてしまうと思う。自分が楽しんでできる範囲で販売を続けたい」と言う。「いずれはケーキ屋などで働きながらプロの仕事を間近で勉強したい」と話す。

 田辺市文里2丁目にあるアパートの一室を改装し、工房にしている「お菓子の時間」は、交流サイト(SNS)を通じてケーキを予約販売したり、朝市「弁慶市」などのイベントに出店したりしている。「販売日を定着させることで、『店』の存在を知ってもらいたい」と、毎週土曜に工房の玄関先でもケーキの直売を始めた。

 店主の鈴木千夏さん(46)は釣り好きで、和歌山の海に魅了され、6年前に大阪府から移住してきた。元々は料理教室を開くつもりだったが、2年半ほど通信講座で日本料理だけでなく、和菓子と洋菓子を学んだのをきっかけに、菓子作りの面白さに目覚めた。

 現在は洋菓子をメインに250円からと手に取りやすい価格で販売しており、「一家だんらんで食べてもらうのが理想」と話す。

 毎月第3日曜に田辺市秋津町のカフェ「cuore(クオーレ)」には、無添加や国産素材を使用した「haluhi.(ハルヒ)」のチーズケーキが並ぶ。予約分でほとんどが完売する人気だという。

 菓子を作るのは田辺市在住の40代女性。自身の子どもに「安心安全の物を食べさせたい」と菓子作りを始めた。店舗は構えず、カフェへの出品を主に考えている。

 「チーズケーキは濃厚だけど重たくない、『もう一つ食べたい』と思ってもらえる味に仕上げられるよう試作を重ねた。子どもだけでなくいろんな人に安心安全なお菓子を届けたい」と話している。

 いずれの「店」も今後は菓子の種類を充実させたり、販売機会を増やしたりすることを目標にしている。販売日などはインスタグラムで発信している。