和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月25日(月)

ヤマアカガエルが産卵・ふ化 印南町のビオトープ

中田稔さんが管理しているビオトープ(1日、和歌山県印南町古井で)
中田稔さんが管理しているビオトープ(1日、和歌山県印南町古井で)
ビオトープで生まれたオタマジャクシ
ビオトープで生まれたオタマジャクシ
 和歌山県印南町古井の農家、中田稔さん(70)が自宅近くの水田だった場所に造ったビオトープで、県のレッドデータブックで準絶滅危惧に分類されているヤマアカガエル(アカガエル科)が産卵し、オタマジャクシのふ化が始まっている。

 中田さんは、多様な生物が共生できる環境を守り、里山を保全する活動に取り組んでいる。自然との共生を考える場として、水田約40平方メートルをビオトープにした。

 活動の一環として2005年から、その年の初めての産卵日の記録を取り始めた。今年は1月12日で、最初は卵の塊が一つだったが、2月1日現在、3カ所になっている。卵は直径約20センチの塊一つに500~600個。一つの塊ではふ化が始まっており、オタマジャクシも見られる。産卵は今後も続き、卵の塊はあと二つほど増えそうだという。

 これまでで、1月中に産卵したのは今年を含め7回、12月中が10回。

 海南市の県立自然博物館によると、ヤマアカガエルは12月から2月にかけてが産卵期。普段すんでいる森林から水辺に移動して交尾する。冬季に産卵するのは捕食生物が少ないことや、限られた水場で他の種類のカエルより早く産卵して親になる戦略と考えられるという。その年の日照時間や水温などによって異なるが産卵から約1カ月でふ化する。生息地は本州、四国、九州。

 中田さんは、インターネット上に設けた「ビオトープ切目川」で産卵日や活動の様子を公開している。最近は冬場に水を入れた水田が見られなくなり、また田んぼそのものも減っているなどして、産卵場所が少なくなっているという。

 中田さんは「記録を付けて観察することで環境の変化が分かってくるし、地域の環境のバロメーターを子どもたちにも伝えていきたい」と話している。