和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

南海トラフ地震に備え事前復興計画 和歌山県みなべ町

事前復興計画の策定に向けて話し合った検討委員会の初会議(和歌山県みなべ町芝で)
事前復興計画の策定に向けて話し合った検討委員会の初会議(和歌山県みなべ町芝で)
 近い将来に発生が予想される南海トラフ巨大地震に備え、和歌山県みなべ町は、被災後のいち早い復興やまちづくりの基本方針となる「事前復興計画」を策定する。28日には、自主防災会や各団体の代表らで組織する同計画検討委員会の初めての会議を同町芝の町役場で開いた。計画は2022年度中の策定を目指す。


 県が14年に公表した「県地震被害想定調査報告書」によると、南海トラフ巨大地震が発生した場合、みなべ町では死傷者が約3900人、揺れや津波による建物の全壊は約4100棟に上ると想定されている。県は18年に「復興計画事前策定の手引き」を策定しており、それに基づき同町も、想定される被害や町の特性、課題を把握し、災害に強いまちづくりを目指す。昨年度から基礎データを集め、計画案を作っている。

 28日の初会議には委員ら約40人が出席した。委員長に選任された和歌山大学システム工学部の平田隆行准教授はあいさつで「事前復興計画は和歌山県が先頭を走っている。巨大地震はいつ起こるかが問題。計画はなんらかの形で生かされる。私たちも力を尽くしたい」と語った。

 計画案について町消防防災室の越本進男室長が概要を説明した。巨大地震への危機感が高まっており、将来のまちづくりにおいても「災害に強い安全なまち」を求める町民の声が多いことを紹介。東日本大震災では、復興・まちづくりの計画策定が困難を極める作業だったことが報告されており、事前に計画を立案して住民の合意形成を図り、策定することの必要性を示した。町が抱える課題をあらかじめ把握し、その課題の解消や行政、事業者、住民の連携により復興事業を円滑に進めるといった目的も示した。

 事前復興計画は、町の他の計画との整合性を図ることが必要で、昨年3月に策定した「町都市計画マスタープラン」についても説明した。「安全・安心なまちづくりの方針」の項目で「復興まちづくり」が記載されている。

 町内の現状や地区別の課題については、コンサルタント業者が説明した。地区は沿岸部を大きく三つに分けており「浸水深が5メートル以上の場所は建物がほぼなくなるが、2メートル未満はかさ上げなどの対策ができる。復興の際、どこを拠点にするか考える必要がある」などと語った。

 質疑応答では、自主防災会から「被災前に計画するには想像力が要る。どこかの成功例を示してくれればイメージが湧きやすい」などの意見が出ていた。

 会議は次回、3月28日に開き、秋と冬にも予定している。5月から10月にかけて3回、住民対象のワークショップも計画している。