和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

県民へのIR説明会延期 和歌山県

 和歌山県は19日、誘致に取り組む「カジノを含む統合型リゾート施設」(IR)について、いずれも25日から予定していた、県内14カ所での公聴会(住民説明会)や、県民から意見を募集する「パブリックコメント」(パブコメ)を延期すると決めた。

 県議会「IR対策特別委員会」が、IRの骨格となる事業主体や資金調達面が不透明などとして、県民への説明を延期すべきと決議したのを受けた。

 県は和歌山市の「和歌山マリーナシティ」へのIR誘致を目指し、運営優先権者でカナダに本社があるIR投資会社の日本法人「クレアベストニームベンチャーズ」(東京都)と、国に提出する「区域整備計画」の策定を進めている。県は19日の「IR対策特別委員会」で原案を説明した上で、25日から田辺市など県内14カ所での公聴会とパブコメを実施、和歌山市議会の同意を得た上で、来年の県議会2月議会に提案、期限の4月下旬までに国に提出する予定としていた。

 委員会では、県の田嶋久嗣IR担当理事やクレアベストニームベンチャーズの梶武司プロジェクトマネジャーが計画原案を説明。しかし、事業主体となる特別目的会社(SPC)の構成や、資金調達計画について明確に示せなかった。

 議員からは「県民の意見を求める段階で、事業主体がはっきりしていない。委員会としてきちっと審議できたのかという話になる」「誰がお金を出して、どんな計画で、どんな運営をしてというのが全然見えない。そんなことで説明会をやっていくのか」など厳しい意見が相次いだ。

 田嶋理事は10月8日の前回委員会で「11月25日までにSPCの姿を明らかにしたい」と発言していたことについて「考えた通りに物事が進まなかった」と謝罪。その上で、資金調達計画を含め、来年1月末までに完全な形で示すと説明。これを受け、委員会は「SPCや資金調達計画の姿形が見えるまで公聴会とパブコメを延期すべきだ」と決議した。

 委員会後、田嶋理事が報道陣の取材に応じ、延期した後の実施時期は現時点ではSPC構成員や資金調達計画を公表できる1月末以降とした。ただ、2月議会への計画案提案に間に合わせるため、公表時期を前倒しできないか事業者と協議するとした。

 住民が意思を示す機会がずれ込むことになったことについては「パブコメは延期しても、県民に計画原案の中身を示すこと自体は意味があると思い、公聴会は開きたかったが、今は適当でないというのが委員の総意なので、尊重したい」と述べた。

 県は公聴会の申込者に早急に延期することを報告したいとしている。