和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

貴重な収蔵品の修復・複製計画 和歌山県白浜の熊楠記念館

昭和天皇が白浜を訪れた日に熊楠が着用したフロックコート(和歌山県白浜町で)
昭和天皇が白浜を訪れた日に熊楠が着用したフロックコート(和歌山県白浜町で)
 南方熊楠記念館(和歌山県白浜町)は、熊楠のフロックコートの修復や、熊楠が知人に宛てて書いた手紙の複製を計画している。いずれも熊楠の人生を知る上で重要な物で、常設展示しているが、劣化している。「大切な収蔵品を後世に残したい」と、インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。


 2025年の開館60周年に向けた事業。1965年の開館に向けた建設時に約3800万円、2017年3月にオープンした新館建築の際には約3260万円の寄付があったという経緯もあり、CFに取り組むことにした。高垣誠館長は「記念館には多くの方々に支えられてきた歴史がある。CFへの挑戦には、熊楠に興味を持ってもらいたいとの思いもある」と話す。

 フロックコートは、1929年6月1日に熊楠が着用した。昭和天皇が白浜を訪れた日で、熊楠は田辺湾の生物について進講した。コートは留学先の英国で仕立てたといわれている。もとは黒色だったらしいが退色し、ボタンは金属部分が露出している。

 手紙は1893年12月、熊楠が英国からフランスのパリに滞在中だった土宜法龍(どき・ほうりゅう)に出したもの。土宜は後に高野山管長を務める真言宗の僧侶で、熊楠は独特の小さな字を紙にびっしりと書いている。

 手紙で熊楠は、独自の思想を伝えようとした。「心」と「物」が触れ合うことで生じる「事」の世界を探求したいという内容で、万物が複雑に絡んで成立する〝南方マンダラ〟の考え方に通じるとの見方もあるという。

 記念館はこのほか、熊楠が収集したカニの標本の整理などにも取り組んでいく。

 寄付額は1万~100万円の18種。金額に応じ、入館券やオリジナルグッズなどを贈る。記念館は目標を500万円としている。CFの受け付けは10月29日まで。

 アドレスは(https://readyfor.jp/projects/minakatakumagusu-museum)。問い合わせは南方熊楠記念館(0739・42・2872)へ。