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2024年12月21日(土)

熊楠が集めた雑誌展示 白浜の記念館

熊楠が収集した雑誌を展示している特別展(和歌山県白浜町の南方熊楠記念館で)
熊楠が収集した雑誌を展示している特別展(和歌山県白浜町の南方熊楠記念館で)
 和歌山県白浜町の南方熊楠記念館は、開催中の特別展で、熊楠が収集した雑誌約30点を展示している。自身の神社合祀(ごうし)に反対する意見や代表的な論文「十二支考」が載った雑誌のほか、民俗学者の柳田国男ら交流のあった人物との関わりも紹介している。

 神社合祀に反対する熊楠の意見を掲載したのは雑誌「日本及日本人」。紀行文を連載していた俳人の河東碧梧桐(かわひがし・へきごとう)が1911(明治44)年3月に熊楠邸を訪ねたことがきっかけになった。熊楠は合祀のデメリットを列挙したほか、写真家に頼んで撮影した田中神社、八上神社(いずれも上富田町)の写真も掲載した。

 雑誌「太陽」には「十二支考」の一部を書いた。この雑誌には柳田も論考を掲載していた。熊楠と柳田を結んだきっかけは、別の「東京人類学会雑誌」。掲載された熊楠の論文を読んだ柳田が手紙を送った。以降、柳田は74通、熊楠は160通以上の手紙を書いた。記念館の三村宜敬学芸員(39)は「柳田は熊楠の知識に期待し、熊楠は柳田を神社合祀に反対する運動の〝後ろ盾〟にしたいという思惑があったのでは」と話す。柳田は政府の官僚だった。

 特別展では、ヒガンバナのスケッチやネコの顔を落書きした雑誌の裏表紙も展示している。いずれも熊楠が描いたとみられる。

 このほか、熊楠の初の単行本「南方閑話」を企画した民俗学者の本山桂川(もとやま・けいせん)が創刊した雑誌「土の鈴」もある。

 特別展は熊楠の没後80周年企画。9月1日まで。