和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月26日(木)

要約筆記知って 田辺で講座始まる

要約筆記を実演する筆記会(協力団体)のメンバーら=和歌山県田辺市高雄1丁目で
要約筆記を実演する筆記会(協力団体)のメンバーら=和歌山県田辺市高雄1丁目で
 難聴や中途失聴者に音声情報を要約して文字で伝える「要約筆記者」の養成講座(和歌山県聴覚障害者情報センター主催)が8日、田辺市民総合センター(高雄1丁目)で開講した。講師で県中途失聴・難聴者協会の蔦尾法夫さんは「聞こえることと、聞き取れることは別。多くの人に要約筆記を知ってほしい」と訴えた。

 蔦尾さんによると、難聴者は「補聴器を使えばいい」「近くで話せば聞こえる」と思われることが悩み。実際の聞こえ方はさまざまで、声がゆがんだり、響いたりして内容が分からないことも多いという。また、中途失聴の場合、「手話を覚えるのが難しい」といった問題もある。

 要約筆記者はそういった人らに音声情報を要約して文字で伝える「通訳」の役割がある。一見、簡単に見えるが1分間に筆記できる文字数は60~70字程度。それに対し、日常会話での話し言葉は約300字。いかに必要な情報を取り上げ、正確に伝えるかが問われる。

 蔦尾さんは「初めは聞こえないと知られることが嫌だった」「静かでいいねと言われることがあるが、音で例えられないような耳鳴りがすることもある」と自身の体験を披露。「要約筆記は聴覚障害者の権利行使のためのもの」と伝えた。また、聴覚障害者の基礎知識や耳のしくみ、難聴の種類、聴覚障害者と話すときの注意点などを挙げた。

 現在、県内の要約筆記者は16人。県内では資格試験を2年前に始めたばかりで、全国に比べると少ないという。今回の全21回の講座は6人が受講している。

 受講した50代の女性は「看護師をしていた時、障害者に接する機会があり、役に立てることがあればいいなと考えていた。手話だけでなく、要約筆記という手段があることを知り、勉強したいと思った」と聞き入っていた。