和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月20日(金)

「ロケットの町」の玄関口に 高台の串本町新庁舎竣工

新庁舎の完成を祝ってテープカットをする関係者(4日、和歌山県串本町サンゴ台で)
新庁舎の完成を祝ってテープカットをする関係者(4日、和歌山県串本町サンゴ台で)
内覧会で庁舎内を見学する町民
内覧会で庁舎内を見学する町民
 和歌山県串本町が、南海トラフを震源とする大規模地震の津波に備えて海抜約50メートルの高台(串本町サンゴ台)に新築した庁舎が完成し、4日、関係者約100人が出席して竣工(しゅんこう)式が開かれた。整備が進む高速道路「すさみ串本道路」の串本インターチェンジ(仮称)の近くにあり、田嶋勝正町長は「『ロケットの町串本』の玄関口として、さらに、万一の大規模災害発生時には多くの人命を助ける司令塔になると確信している」と述べた。新庁舎での業務開始は26日の予定。


 現在の本庁舎(同町串本)は、津波の浸水被害が想定される海抜約3メートルの低地にあり、古座分庁舎(同町西向)も海抜約3・9メートルと低い。防災力の向上が大きな課題となっていたことから、くしもと町立病院近くの谷を埋め立てて造成した土地に移転することを決め、2019年9月から建設工事を進めていた。

 新庁舎には現在の本庁舎や分庁舎、保健センター、地域包括支援センター、文化センターの社会教育部門を集約し、1階には町民の利用が多い住民課や福祉課、税務課、保健センター、銀行などを配置。2階には議場や総務課、建設課などを置く。

 大規模災害に備え、地震の揺れを抑えるために2階建てにしたほか、地震の揺れに対して復元力があるという「プレキャストプレストレストコンクリート造」を採用。非常用発電機や飲料用受水槽などを備えており、災害後も単独で7日間業務が継続できるという。

 敷地面積は1万3339・33平方メートルで、延べ床面積は庁舎棟が5442・32平方メートル。総事業費は31億1836万3945円。

 午前10時から開かれた竣工式には、自民党幹事長の二階俊博衆院議員や世耕弘成参院議員、鶴保庸介参院議員、仁坂吉伸知事、地元県議、周辺首長らが出席。二階幹事長は「躍進する串本町を象徴するような見事な庁舎が完成し、(本年度中には)ロケットの打ち上げもなされる。大変うれしく、皆でいろんなことを工夫しながら、串本町が大きく発展できるよう頑張ろう」と呼び掛けた。

 仁坂知事は「庁舎跡には高めの県営住宅を造り、住民が津波から逃げ上がれるようにする。津波をばねに発展していく串本町に心からエールを送るとともに一生懸命支えたい」と述べた。

 田嶋町長や町議会の鈴木幸夫議長、国会議員ら関係者がテープカットをして完成を祝った後、新庁舎を内覧した。

■一般内覧に250人

 新庁舎では同日午後2時から、一般を対象とした内覧会もあり、町総務課によると午後4時半までに約250人が来場した。

 見学に訪れていた町内の女性(40)は「すごくきれいで、天井も高くて開放感がある。津波のことを考えると高台にあるのは安心」。一方で、海岸近くに住むという女性(88)は「役場が高台移転したからこそ、後に残った住民のことを、より考えてほしい」と話していた。