和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

熊野古道の道標新しく 上富田町のガイドの会

「稲葉根越え」で熊野古道の道標を立てる口熊野かみとんだガイドの会の会員ら(和歌山県上富田町岡で)
「稲葉根越え」で熊野古道の道標を立てる口熊野かみとんだガイドの会の会員ら(和歌山県上富田町岡で)
地図・熊野古道「岡坂越え-稲葉根越え」
地図・熊野古道「岡坂越え-稲葉根越え」
 和歌山県上富田町の町民有志でつくる「口熊野かみとんだガイドの会」は、町内にある熊野古道をもっと多くの人に歩いてもらおうと、「岡坂越え」(岡)―「稲葉根越え」(岩田)間で道標を新しくしたり、古道を歩きやすくしたりしている。会員らは「名所があり、風情のある道が残っている」とアピールする。

 町内には世界遺産の八上王子跡(岡)や稲葉根王子跡(岩田)だけでなく、一瀬王子跡(市ノ瀬)や水ごり場(岩田)、国の名勝「南方曼陀羅(まんだら)の風景地」である田中神社(岡)、南紀熊野ジオパークの見どころである救馬渓(生馬)や富田川の潜水橋(岩田、生馬)など、自然や歴史、文化的景観が素晴らしい場所がいくつもある。中でも熊野古道中辺路街道沿いは見どころが多く、手軽に巡って楽しむことができる。

 ガイドの会が、とりわけアピールするのは、岡から稲葉根トンネルの山上を越えて岩田に通じる「稲葉根越え」。県道沿いの深見平を過ぎた辺りから稲葉根王子跡付近まで約500メートルにわたって土のままの道が続いている。田辺市下三栖の三栖王子跡から通じる「岡坂越え」の道も舗装されていない。

 裏地好晴会長(79)=上富田町朝来=によると、稲葉根越えは平安後期の公卿・藤原宗忠が書いた日記「中右記」に、おはらいをした場所として登場する。岡坂越えは、世界的な博物学者・南方熊楠が神社合祀(ごうし)に反対する活動で八上王子などに行く際、上半身裸で写真に納まった場所として知られる。裏地会長は「2カ所とも、世界遺産に登録されている古道と同じ価値がある。ぜひ歩いてみてほしい」と呼び掛ける。

 ガイドの会は業者に委託し今月中頃、八上王子跡や稲葉根王子跡の方向や距離などを示す道標を分岐点9カ所に設置。それとは別にこのほど、会員が「熊野古道」と表記した道標を3カ所に立てた。これまで1999年開催の南紀熊野体験博の際に設置された道標があったが、コースをより分かりやすくした。

 「稲葉根越え」は2年前の夏から毎年、草を刈ったり、倒木を取り除いたりするほか、路面の整備を続けている。昨年秋には「岡坂越え」でも道普請をした。

 これとは別に、熊野古道大辺路街道の田辺市新庄町と上富田町朝来の境界にある「新庄峠」でも道標を設置したり、道を整備したりしてアピールする。

 いずれの場所も道普請は定期的に続ける計画で、裏地会長は「コロナ禍が収束に向かえば、ウオークイベントを企画するなどして、より一層アピールしていきたい」と話している。